秋の歌
かすかに鶴の しにぎわと
ほのかな光と 昇り往く、
はや断末魔? ほうっと毀す
斃れた花の いきれのごとく、
「菫ぢゃ! 菫ぢゃ!」と児さながらに
澄んだ眸を ご機嫌で揺らす、
秋の詩人の声がする──、
散りばめられた 葉群、橙、花弁──失墜。
ほんに 秋は佳いものですね
くすむ色彩に沈める花々もかわゆらしく、
しにぎわの、鶴のきゃしゃなステップ
手折られた花の千切れるごとく、
「夕陽じゃ! 夕陽じゃ!」と犬さながらに
棲む領域で 季節の断裂を俟っている、
秋の詩人の歌がする──、
吹き消されもした 雑踏、ビル、ひとの香──失墜。
*
秋は、死にぞこなった、詩人の似合う季節です、
デニムのジャンパー襤褸で着て、後ろめたげに背を丸まらせる。
秋の歌