秋の歌

 かすかに鶴の しにぎわと
 ほのかな光と 昇り往く、
 はや断末魔? ほうっと毀す
 斃れた花の いきれのごとく、
「菫ぢゃ! 菫ぢゃ!」と児さながらに
 澄んだ眸を ご機嫌で揺らす、
 秋の詩人の声がする──、
 散りばめられた 葉群、橙、花弁──失墜。

 ほんに 秋は佳いものですね
 くすむ色彩に沈める花々もかわゆらしく、
 しにぎわの、鶴のきゃしゃなステップ
 手折られた花の千切れるごとく、
「夕陽じゃ! 夕陽じゃ!」と犬さながらに
 棲む領域で 季節の断裂を俟っている、
 秋の詩人の歌がする──、
 吹き消されもした 雑踏、ビル、ひとの香──失墜。

  *

 秋は、死にぞこなった、詩人の似合う季節です、
 デニムのジャンパー襤褸で着て、後ろめたげに背を丸まらせる。

秋の歌

秋の歌

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-09-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted