スニーカーで踊る
(ゆめはいつも、無色透明)
エヌ、というなまえをあたえられた、機械のからだをもつひとが、ときどき、なにかを発散させるように、真夜中のスクランブル交差点の中心で、踊った。まれに通過するひとを、車を、軽やかなステップ アンド ターンでかわし、ジャンプをして、着地をした瞬間に、だいたいのものが眠りについた街に、がしゃん、という、エヌのからだが機械である証明がなされ、わたしは、三時間前に駅前のコーヒーショップで買って、すでにコーヒーとしての味を損なった薄いアイスコーヒーを、ちびちびとすすりながら、ふいにおそってきた虚しさが、はやく空中分解すればいいのにと思った。
愛に飢えている、なんて、物語のセリフみたいだと感じながらも、もともとはにんげんだったエヌが、ぼんやりとその言葉をつぶやく様子には、なにか、やわらかいものが胸につかえた気がして、まいる。エヌの渇きを計り知れない、わたしは、じぶんのからだがいつ、機械になるのかを想いながら、現実から逃げるようにそっと、目を閉じる。
がしゃん
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