愛について
みんな、土を愛でたね。
たぶん、そこに、だいすきなひとたちが、たくさんいて、なんとなく、あたたかい感じがするから。森のなか。アルビノのくまが、みんなを、かわいそうと、かわいいがいりまじった眼差しで、みている。慈しみと、軽蔑。同情。
うたをわすれた、カナリアが群れをなし、夜明けを渡る。ぼくがキッチンで、甘いカフェオレをつくっているあいだに、きみが、テレビをつけて、他の時間帯の厳かさとは異なる、ただ、静けさを湛えただけのニュース番組が、ながれる。ねむらないひとたちの、活動記録。ぼくらが、一時的に意識を手離しているあいだにも、世界は変化している。
機械仕掛けの、あたらしい人類が、駆逐していく大地を、みんな、どうしようもないとあきらめながらも、それでも、森にあつまって、だいすきなひとたちがいる土に触れて、感動している。
あやまって、ほんとうに苦い虫を噛んでしまったような、表情を、アルビノのくまはして、魔法瓶に淹れてきた紅茶を飲みながら、ぼくらは、しらないだれかとだれかの逢瀬を、ながめていた。
愛について
時雨の「illusion is mine」の好きなところは、さいごのサビで、パートがいれかわるところだなあと思った。