星月夜の菫

星月夜に蔽われた暗みと湿度籠る裏庭の翳で、
貴女のしろいゆびさきが降るように光と毀れ、
うすむらさきの装飾のされた爪はそらを揺れ、
呪うように祈るように夢引掻き不在を撫でて、

貴女と密会するこの裏庭の翳は月に照らされ、
象牙製のその手はしなやかに不安の翳帯びて、
けぶるようにしらじらな陰翳揺れ渦巻もして、
色っぽいうすむらさきはちかとどぎつく赫う。

  *

不在の実在はわが身を夢と連れ渦巻へ飛ばす、
うすむらさき心臓に遺され月光がそれを射す、
されば花をこのむ私はまた一つの観念を抱く、
菫よ──情念・理念綾織る愛の砂浜への墜落。

星月夜の菫

星月夜の菫

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-27

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