星月夜の菫
星月夜に蔽われた暗みと湿度籠る裏庭の翳で、
貴女のしろいゆびさきが降るように光と毀れ、
うすむらさきの装飾のされた爪はそらを揺れ、
呪うように祈るように夢引掻き不在を撫でて、
貴女と密会するこの裏庭の翳は月に照らされ、
象牙製のその手はしなやかに不安の翳帯びて、
けぶるようにしらじらな陰翳揺れ渦巻もして、
色っぽいうすむらさきはちかとどぎつく赫う。
*
不在の実在はわが身を夢と連れ渦巻へ飛ばす、
うすむらさき心臓に遺され月光がそれを射す、
されば花をこのむ私はまた一つの観念を抱く、
菫よ──情念・理念綾織る愛の砂浜への墜落。
星月夜の菫