夜中散歩
泣いているひとのかたわらで、静かに戯れる。百合と蝶。生命線の長さをみて、おおげさによろこんでいる、占いが好きなあのこ。だれかが透明な拳銃を、つきつけている。いつも。どこかに。
幾何学模様のスカートをひるがえし、月からの新人類であるひとが、午前二時の交差点を行く。感応式信号機は黄色信号で明滅をくりかえし、真夜中の心臓をさぐるみたいに、慎重に、丁寧に、歩いていく。この星のひとたちは、いつでも幸福そうですねぇと、うそくさい笑みを浮かべて、ふりかえり、わたしは、一瞬、すべてのことばをわすれた。
夜中散歩