夜中散歩

 泣いているひとのかたわらで、静かに戯れる。百合と蝶。生命線の長さをみて、おおげさによろこんでいる、占いが好きなあのこ。だれかが透明な拳銃を、つきつけている。いつも。どこかに。
 幾何学模様のスカートをひるがえし、月からの新人類であるひとが、午前二時の交差点を行く。感応式信号機は黄色信号で明滅をくりかえし、真夜中の心臓をさぐるみたいに、慎重に、丁寧に、歩いていく。この星のひとたちは、いつでも幸福そうですねぇと、うそくさい笑みを浮かべて、ふりかえり、わたしは、一瞬、すべてのことばをわすれた。

夜中散歩

夜中散歩

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-15

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