白銀花の眸

青津亮

 白銀花を熔かし容れ 金属液としたたるように、
 なよやかで、ましろき火のひとすぢうつろう肢体、
 官能の翳 冷酷の眸に揺れている──蠱惑としなる白蛇よ、
 きみのまなこは美しい、何故って、美への不感があるから。

 さながらその美 海や空にも似ているよう、
 壮麗精緻な現実の、冷然な照り返しにも似ているよう、
 その眸、美さえ映さぬその虚空、閃く銀の紗の羽音、
 その眼じたいが美しい、それこそ森羅の不思議である。

 僕は君の視界の裡で、「わたし」を身振と奇怪にうごこう、
 きみが眸に映る奇怪な僕は まるでのっぺりと滑稽だろう、
 滑るように退行、するすると逃げ、低みに蹲る僕を見ておくれ、

 自意識過剰な役者の僕が、そが眸の鏡面 わが肉に埋め秘め、
 僕、同情不能な君の手前で犬死しよう、第一級の喜劇役者として。
 ──僕等を閉ざす 硝子の箱に、蜘蛛の無意味な涙がしたたる。

白銀花の眸

白銀花の眸

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-03

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