夏の雪

 しんしんとふるのは、雪。いま、ふっているのは雪ではなく、花。ぼくは、花だ、と思いながら、お店のまえのちいさな川に、白い花をふらせている、お花やさんのおにいさんのようすを、みている。おとうさんは、クレープを、もえちゃんのためにつくっていて、もえちゃんは、あれは、自然はかいになるの?、と、まじめなかおで、ぼくに言って、ぼくは、わかんない、と言って、あの、おにいさんは、はかい、とかするようなひとじゃないと思うから、だから、わかんない、としか言えなかった。もえちゃんは、おともだちとプールに行こうとしたらことわられたらしくて、ぼくも、プールはちょっとにがてなので、もえちゃんにはごめんなさいをして、もえちゃんは、でも、わたしもつかれちゃったからクレープたべて帰るの、と、やさしくわらって、クレープができるまで、川をながれていく白い花と、おにいさんを、みていた。
 ときどき、おにいさんの耳が、きらりと光った。
 白い花は、雪みたいにしんしんと、川に、ふっている。

夏の雪

夏の雪

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-08-02

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