夏の雪
しんしんとふるのは、雪。いま、ふっているのは雪ではなく、花。ぼくは、花だ、と思いながら、お店のまえのちいさな川に、白い花をふらせている、お花やさんのおにいさんのようすを、みている。おとうさんは、クレープを、もえちゃんのためにつくっていて、もえちゃんは、あれは、自然はかいになるの?、と、まじめなかおで、ぼくに言って、ぼくは、わかんない、と言って、あの、おにいさんは、はかい、とかするようなひとじゃないと思うから、だから、わかんない、としか言えなかった。もえちゃんは、おともだちとプールに行こうとしたらことわられたらしくて、ぼくも、プールはちょっとにがてなので、もえちゃんにはごめんなさいをして、もえちゃんは、でも、わたしもつかれちゃったからクレープたべて帰るの、と、やさしくわらって、クレープができるまで、川をながれていく白い花と、おにいさんを、みていた。
ときどき、おにいさんの耳が、きらりと光った。
白い花は、雪みたいにしんしんと、川に、ふっている。
夏の雪