七月の終曲
きれいな夜にやさしさをおとしこめて。わに様が、ガラス玉に透かす月を、たべちゃいたいとうっとりしていたことに、ぼくらは、なにかしらのおわりをみていた。空想の。想像の。
むこうの街では、にぎやかなお祭りがはじまっている。いま、こちらがわはどちらかといえば、夢の跡みたいな、そんな静けさと、さびしさを湛えていて、わに様のかたわらで、ぼくらは、だれにも望まれない行為を自発的に致し、荒い息を交わしながら、ねそべっている。わすれられない、あのひとは、いつまでもぼくの底辺に、沈殿しているから、きみが、あたらしい水であふれさせて、クリアにさせてほしい。真っ赤なエナメルのハイヒールをはいたひとが踊り、ヒールがアスファルトを叩き、削る音だけが世界を侵食する。二十三時。
七月の終曲