ゲンジツション

 男女がくっついて歩く光景ばかり、やたら目につく。そして私はいらつく。好きで彼氏彼女の後ろを歩いてんじゃないやい。お前らが私の行先の目の前をゆっくりゆっくり歩いてるからじゃい。
道幅は狭く微妙に追い越せない。それもいらつく。
目の前のあなたらは私のことなんか眼中にないでしょうね、どうせ。
こうやってひねくれるのは最近見てるYouTuberの影響も多大にある。Kという人。
他人が自分の預かり知らぬところで何をしようとも何をしゃべろうともどうでもいいことだった。
Kは他人を下に見ているし、自虐を金にしているタフな人間だと思う。単純に動画が面白いから見続けている。
私も他人を下に見てるよ。
じゃないと自分を保てないからね。
急にメンタルが沈む事が多い私は、友達も少ない。一度どん底を知ってしまうとこの世のすべてに諦観を覚える。
他人を無意識に振り回している。
どこかの誰かに『ごめんなさい』と謝りたくなる。謝ることが自分にとって居心地がいい。
他人を下に見ながら他人に迎合したい。
私はもう、前にも歩けなくなっている気がした。
目の前の彼氏彼女はいつの間にか消えていた。日が沈みかけている。

ゲンジツション

ゲンジツション

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-08

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