室温


 私から出た熱がそのままこの部屋の温度になった。
 今日も何も何にもできなかったなぁ、と外の暑さでカサカサになった手の甲を擦りながら言う。
 暑さでのたうち回るのは逆効果だ。身体の熱を放出して、上へ上へと昇っていくことに期待することだ。
 気体は対流をして時間をかけて均一になっていくのだろうか。
 熱にはパワーがある。
 誰もがそのパワーを取り合っている。
 でも私の熱を取り合うものはどこにもない。
 行き場をなくして、部屋の天井にぶつかった。天井に温度が溜まっていく。ぐぅぐぅ寝続けたのなら、熱は部屋の壁を伝って私の元に帰ってくるのだろうか。帰ってきた熱を、拒絶する私に。

 私から出た熱が、開けられた窓から網戸を通り外へと流されてゆく。
 今日も何も何にもできなかったと愚痴をこぼす。
 寝る前はしっかり、体の熱を逃すと良いそうだ。
 外の気温がそのままこの部屋の温度に置き換わっていく。
 誰にも求められない私の体温が、街へ繰り出し彷徨い続けている。
 起きる頃に、起きてしまう頃には私の元に帰ってきてくれるだろうか。

室温

室温

  • 韻文詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-04

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