浮浪者

 どうして憂鬱はむず痒く膨れて、剥がれ難いのでしょうか。さながら悪性の感染症のように、膿み続ける一方だ。蠅もたかれば、蛆も湧く。人々は去って孤独に取り残されたまま、死とじっと見つめ合う。僅かな衣類の残骸のみを纏い、横たわりながら。敗北とは勝負の席に立つ権利すらなかったことに、後になって気がつくことだ。死すべき時に死ねる者を羨ましく思い、蟻に喰われながら自分というものが無くなっていくのを感じた。

浮浪者

浮浪者

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-21

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