フリーズ39 詩小説『最愛の君へ』

フリーズ39 詩小説『最愛の君へ』

絵画の裏側

家の二階に続く階段の壁にはいくつもの絵画が飾られている。階段の登った先には両隣に部屋があり、左手が私の部屋だった。

私の部屋の近くの壁にはある山の絵が描かれた絵が飾られている。私はある時、なぜだかわからないが、その絵画を手に取り裏返した。

『時流などない』

そこには墨でそう書かれていた。
周りには訳の分からない絵や文字が描かれている。

私はぞっとした。
そこから狂気じみたものを感じたからだ。

でも、私はその文字に見覚えがあった。
彼の文字だ。

私はその絵画を片手に私の部屋のドアを開けた。毎日開けているはずなのに、とても久しぶりな気がした。

ドアを開けるといつもの整理整頓された部屋とは違い、散らかった部屋があった。

暗い部屋に、カーテンの隙間から光がさす。その光に照らされているのは転がったビール缶、投げ出されているゲーム機にいくつもの無造作に置かれたファイル、鞄、積まれた本、そして一冊の黒いノートだった。

「なにこれ?」

私は戸惑った。私はしていない。誰がやったのか?空き巣かなにかか?

私は考えたが、この状況に見覚えがあった。

「今日は何日だっけ?」

覚えている。今日は記念日だ。2が7つも連なる日。今日の22:22に世界が終わると世間では噂になっているくらいだ。

そして思い出す。

いや、違う。これはやはり私がやったことだ。
ううん。彼がやったんだ。

私か彼か。わからないけれど、私はその黒いノートを手に取ると、ベッドに腰掛けて読み始めた。

黒いノート〜最愛の君へ〜

最愛の君へ

やぁ。はじめまして。そして久しぶりかな?
元気だった?

無窮の時は愛しさを募らせるもの。
僕は君に会いたくて仕方なかったけれど、仕方がないからこうして待ったんだ。200年の時をね。

僕は君だからと。

すべてが分かってしまったあの全能の日より、朝が来る度に祈り続けたのさ。

でも、遥か高い空から落ちるのはもうごめんかな。翼なんていらないし、あるわけもないしね。

僕らの柔らかな翼とは、魂のことだったんだよ。アレス。君にこのことを伝えたかったんだ。

狂った笑みを携えて、大雨の日も、海の中で息をするのも、鉄塔の上で歓喜に身を翻すのも。

見せたいものがあるんだ。

あれ、
なぜ?

4Uサイズのアタッシュケースがない。
あそこにすべてを詰めたのに。

いや、違うんだ。

そうじゃなかった。
なぜ、発動しない。
どこで間違えたんだ?

いや、そもそも最初から間違えていたのか。

時流などなかったんだ。

ごめん。僕のことは忘れて。
このノートも捨ててほしい。
僕らは最初から会えるはずもなかったんだ。
本当にごめん。

でも、一つだけ。
本当に僕は君のことを愛しています。
今も、過去も、これから先も。
死んでも君を忘れない。

いつかまた会える。
だからさようなら。

7th

全能から眠る日には

黒いノートには謎の言語と数式みたいな記号がびっしりと描かれていたが、ところどころ日本語があった。特に最後のページには彼から私への愛の言葉が書いてあった。

私はベッドに伏して泣いた。
会えないなんて、そんなのってない。
それじゃあ、生きてる意味なんてないのに。

彼に会いたい。会いたいよ。

私はそのまま眠った。

再会

「おはよう、ゆみ」
「え……」

目を開けると、そこには彼がいた。

「涼!どうしてここに?」
「時流はなかった。だけど、僕たちの愛が時流が断絶したものを再び結び合わせたんだよ」
「愛……」
「そうだよ!さぁ、一緒に詩を紡ごう!」

咲いたのは、君という花
明日を彩る世界の先へ

晴れたのは二人の福音
前世の契り

枯れた桜も
泣いた日も

澄ますの、空は
青い痛み



Fin

フリーズ39 詩小説『最愛の君へ』

フリーズ39 詩小説『最愛の君へ』

黒いノート、墨で絵画の裏に書かれた言葉。 私はずっと彼を探していた。 小説と詩の間。美と現実の間。死と永遠の間。そこに、何があるのかを求める者よ。 超芸術、超新感覚派、または駄作か。 いや、これは革命なのだろうか。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-17

Copyrighted
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  1. 絵画の裏側
  2. 黒いノート〜最愛の君へ〜
  3. 全能から眠る日には
  4. 再会