少年の翳
先日、誕生日を迎えました。
二十九となった私のこころには、まるで冷たい水晶が秘められる、
その硬質な反映には少年の日の私があって、
独りで遊び暗みのこもった背で怨めしげに周囲を睨みつけ、
さみしい眸 さながら星のようにとおく燦らせている。
いまその嫌われ者の少年の翳、私憎みはしないのだ、
ただちらちらと陰翳をうつろわす月のおもてを、
すこしばかり傾かせて少年の私に照らすばかりである、
さればかれが背を折れまがるうでで蔽い、つと流れる涙で伝おう、
なぜといい二十九の私の淋しさと少年の私のそれはおなじであるから。
やりきれぬ無念のようなものを抱え、不連続の淋しさ、
それ私が生涯持ち抱える重たい翳のようなものであり、
さればそれ、楚々たる死なるものへと清ますほかはない、
なにもかもを所有せざる少年の私のながす涙を、
一切を放り棄てんとする私の向かう硝子の風景へ剥かねばいけない。
少年の翳