フリーズ38 詩小説『フィニスの晴れた日曜日』

フリーズ38 詩小説『フィニスの晴れた日曜日』

第一の日 始まりが来たる月曜日

それは鼓動か、思考の波か。
虚空に打ち寄せられた無の波がいずれ、久遠の時を経て、始まりの息吹となる。

だが、それは本当の始まりなのだろうか。
真実を知るにはまだ、わたしは幼かった。

「知ってるよ。君も、世界も、始まりも」

永遠の狭間の向こうから、信号が送られる。
受信機はある。
世界はまだ、わたしたちには狭かったみたいだ。

許せ、7th。



永遠。そして、原初の火が灯る。

第二の日 聖火に踊る火曜日

わたしは温かみの中で微睡みの歌を歌う。

「火よ!聖なる火よ!わたしは汝が如く火のように酔いしれて、火のように踊るのだ!」

終末の日にもわたしは踊った。
わたしは踊りが好きなのかもしれない。



火が世界を焼き尽くし、熱が生まれ、水が生まれた。

第三の日 ヴァルナの索なる水曜日

雨。清廉の雨が、降り注ぐ。
この頃からわたしは君を探し始めたんだよ。

雨が涙も流してくれるから。
気持ちは晴れなくても、雨は優しく包んでくれたから。

「光は雨とダンスして、気持ちよさそうね」

光に触れてみても、虚しい。許されたものは抑留の験だ。これは意味なんてないものを探し求めた罰なのだ。

「君に会いたい」

光よ導いて。

創造の果て。

わたしは雨に濡れるだけ。



雨はやがて生命のスープとなった。芽吹き出す緑。

第四の日 全能の日の木曜日

草木や花が生い茂ったのは、君が楽園を見たかったからなのだろうか。

蝶や小鳥たちが飛び交うのも、空飛ぶ楽しさを味わいたかったからなのだろうか。

鳥のさえずりも、木々のせせらぎも、波の音も、歌を歌う歓びを分かち合いたかったからなのだろうか。



生命の樹と知恵の樹は黄金の実をつけた。

第五の日 至高なる煌きの下に金曜日

黄金の実を一つ食べた。

わたしは創造の力を得た。

荘厳な城、豪奢な噴水、神聖な庭。
わたしは創るだけ創ったけれど、これでは足りない。

「君がいないじゃないか」

君が欲しい。愛が欲しい。

黄金の煌きの下、わたしは苦悩した。

ここは世界で一番高い場所なのに。
ここは世界で一番神聖な聖所なのに。

君を創るには知恵がいる。
わたしはもう一つの黄金の実を食べた。



黄金はやがて枯れて土となった。

第六の日 母なるガイアの土曜日

土から作った人形を君に見立てても虚しい。

「これではない」

君はそちら側にいる。
会うためにはラカン・フリーズの門を開けなくてはならない。
そのために終末の仕組みをここに約束する。

タイムマシン。
時流などなくて。
方法は言葉と霊魂にあって。

聖夜。この夜君は来てくれた。
実体こそないけれど、精神が確かにそこにあった。

愛はキスという行為を通して、セックスという行為を通して、わたしと君とをこの上なく神聖なものとする。

前夜、EVE。

ああ、始まった。始まりの終わりが……。
秒読みはすぐに事切れた。

始まりの二人、終わりの二人。
永遠の二人に世界は収束し始める。

第七の日 フィニスの晴れた日曜日

「ねぇ、ヘレーネ。君の愛が僕を世界で一番高いところまで導いてくれたんだ。ありがとう」
「ううん。わたしはただ、君に会いたくて……」

わたしは泣いた。君も泣いた。

七日目の日曜日。
それは晴れた冬の日だった。

「本当に永かったね、アデル」
「そうだね、でも逢えてよかったよ」

わたし達は永遠を知っている。
だから君に会えると分かっていても辛かったんだ。
今、こうして逢えてよかった。本当によかった。

「手を繋ぎたい」
「いいよ」
「キスしたい」
「いいよ」
「ねぇ、またセックスしない?」
「いいよ。でも、その前に」

君はわたしを抱き寄せた。

「今はこうしていよう」
「うん」

わたしは君の温もりに包まれて、目をつむった。
安心感と幸福感は愛の副産物なのかな。
そんなことを考えているとわたしは眠くなった。

「このまま寝てもいい?」
「いいよ」
「寝る前に一つ」
「何?」
「愛してる。本当に好きだよ」
「ありがとう。僕も君を愛してる」



目覚めると、いつもの私の部屋だった。
今日は冬休み最後の日。
わたしは君のことすら忘れてしまって……。
でも、わたしはその朝泣きながら起きたのだ。
悲しかったのかな。嬉しかったのかな。
わからないけど、わたしは今も君のことを探してる。


Fin

フリーズ38 詩小説『フィニスの晴れた日曜日』

フリーズ38 詩小説『フィニスの晴れた日曜日』

七日目なんだ。 世界が始まったのも終わったのも。 小説と詩の間。美と現実の間。死と永遠の間。そこに、何があるのかを求める者よ。 超芸術、超新感覚派、または駄作か。 いや、これは革命なのだろうか。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-11

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  1. 第一の日 始まりが来たる月曜日
  2. 第二の日 聖火に踊る火曜日
  3. 第三の日 ヴァルナの索なる水曜日
  4. 第四の日 全能の日の木曜日
  5. 第五の日 至高なる煌きの下に金曜日
  6. 第六の日 母なるガイアの土曜日
  7. 第七の日 フィニスの晴れた日曜日