し み し み

 うれしいのかな。よくわからないときは、テレビをけして、スマートフォンの電源もおとして、窓を閉めて、あらゆる声、音をきかないようにする。目をとじて、すべてを遮ろうとするのだけれど、オルカ、きみの呼びかけだけは、遮断できないで、あたしのなかで、骨伝導しているみたいに。
 電波塔のうえで、少女が交信している、どこかの星のだれかはときどき、歪んだエマージェンシーを送り、春のあいだに咲いた花は、静かにそのからだを横たえてゆく。

 もうすぐ五月です。

 きみがすこしだけ、狂う季節。

 まよなかの喫茶店で、クリームソーダをもとめる。きみはチーズトーストで、あたしの恋人はアイスティーにありえない量のガムシロップをそそぐので、グラスのなかで、蜃気楼ができる。かなしいニュースで衰退していくのが、あたしたちの神経。つよくて、よわくて、でも、よわいことは、わるいことではないと、きみは云う。チーズトーストのチーズを、びよんとのばしながら。

し み し み

し み し み

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-24

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