し み し み
うれしいのかな。よくわからないときは、テレビをけして、スマートフォンの電源もおとして、窓を閉めて、あらゆる声、音をきかないようにする。目をとじて、すべてを遮ろうとするのだけれど、オルカ、きみの呼びかけだけは、遮断できないで、あたしのなかで、骨伝導しているみたいに。
電波塔のうえで、少女が交信している、どこかの星のだれかはときどき、歪んだエマージェンシーを送り、春のあいだに咲いた花は、静かにそのからだを横たえてゆく。
もうすぐ五月です。
きみがすこしだけ、狂う季節。
まよなかの喫茶店で、クリームソーダをもとめる。きみはチーズトーストで、あたしの恋人はアイスティーにありえない量のガムシロップをそそぐので、グラスのなかで、蜃気楼ができる。かなしいニュースで衰退していくのが、あたしたちの神経。つよくて、よわくて、でも、よわいことは、わるいことではないと、きみは云う。チーズトーストのチーズを、びよんとのばしながら。
し み し み