こわれるだけ
いぬがいて、かなしいだけの国だけれど、でも、ところどころに温もりも存在した。生命、というものが発する熱は、ここちよいのだ。呼んでも応えない、ネム。ロールケーキをたべているあいだに、夜、とっくに聞き慣れたはずの、踏切の音におびえる。いずれは植物になる、わたしたち。ぼくたち。博物館にて。ていねいに、肉体をあつかわれて、展示物となった。きみ。
四月は残酷に、少女が紡いだ詩を、ほどいてゆくね。
朝になったら空気になってあげる。
どうぶつたちだけの世界で、血のにおいがするのがたえられないよ。吐く。
天体望遠鏡をのぞいて。意識だけが、宇宙にとんでる。ネム。
細胞凍結。
きみは、透明な壁の、向こう側のひと。
こわれるだけ