アンフィット

 雪がおわったね。つぎは、夏のひまわり。瞳を染める。あざやかなイエロー。きみに似合う。

 やさしいから、だれかのかなしみをいっしょにせおう、怪物がいる。

 ぼくは、安楽(あんらく)さんの被写体となり、安楽さんは、ぼくのすべてを、この世でいちばんうつくしい存在として残したいと言い、アルビノのくまは反対して、叔父は、アルバイト代をちゃんと支払ってやってくれとだけ、安楽さんに頼んだ。月からの新人類たちは、この地球(ほし)にまだ、からだが対応できていないせいか、ときどき、溶けた。えぐい、という言葉が相応しく、地球人のなかには、彼らを忌み嫌うものも少なくなく、所詮、おもいやり、とは、承認欲求から連なる身勝手な感情の暴力なのだと、アルビノのくまは吐き捨て、ぼくは、泣いた。

 そういうにんげんばかりでは、ないよ。(おそらく)

 安楽さんにはじめて撮ってもらった写真。砂浜に横たわり、遠くにあるなにかをみようとして、なにもみていない、うつろな表情のぼくを、叔父は、ありきたりだけれど人形みたいだと言い、アルビノのくまは、あいつはおまえのことをなにひとつわかっていないと怒っていた。
 たばこを吸っているときの安楽さんは、どこか物憂げで、以前、ファッションビルの看板のモデルとして起用した新人類のひとが溶けたのだと、ぼやいた。
 液体になったら、地球人も、新人類も、生命体も、死骸も、無機物も、有機物も、なにもかんけいないのだなぁと思ったと、安楽さんはつぶやいていた。

アンフィット

アンフィット

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-10

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