フォレスト

 森で、であいました。
 きれいな花をくわえている、ひとたち。しゃべらない。くちを、ひらけないのです。花のせいで。
 この星は、もうすこししたら、冷凍されます。神さまが設定したのか、氷河期、というもののおとずれによる、自然淘汰。生き残る生命体が、真の、この星の住人であるのだと、かなしそうに、森のいきものたちは言いました。わたしは、とっくのむかしに、だれともつうじなくなったスマートフォンを、森の土に埋めようとして、でも、それは、よくないことなのだと、きれいな花をくわれているひとに、おしえられた。言葉ではなく、表情で。

(i、というものをあたえてくれたひとへの懺悔として、わたしは、わたしを、てばなす)

 拝啓。
 海。
 すべての、みんなの、おかあさんへ。
 わたしの好きな、オルカ。あのこだけでも、選ばれるものであってほしい。
 スマートフォンをすてることを、あきらめて、花をくわえているひとに、手をひかれ、森を行きます。

フォレスト

フォレスト

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted