四月の詩

 めかくしをして。
 こわいものから、にげるみたいに。ふあんなものを、排除するみたいに。
 テレビを消す。
 金糸雀。ぼくの声がきこえない、のか。もう、きみは、ただの、やさしいだけの存在になってしまった。暴力性は皆無となり、ついでに、個性、めいたものも失ってしまって。
 よかったのか、わるかったのか。
 わからないまま、たぶん有名ではない、たまたま、本屋さんの詩のコーナーにあった、タイトルに惹かれた詩集を、ぱらぱらとめくる。言葉は、あたまにはいってこない。支離滅裂、ではなく、たんじゅんに、理解不能なのだ。金糸雀は、生きる気力までなくしてしまったのか、ぼんやりと、パソコンの画面をみている。逆らわずに、順繰りに、再生されてゆくだけの、動画。真夜中なので、ときどき、星の啜り泣く声がきこえる。星も、たいへんなのだろう。そう、しみじみと言ったのは、住んでいるマンションの一階にあるコンビニの、店長さんだった。

 春の夜は、香辛料のにおいがするね。

四月の詩

四月の詩

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-06

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