awake

 無垢な鳥の囀りに、あのひとは覚醒して。四月。おわりのあとの、はじまりは、いつも、不安定に揺れる、小舟。わたしの指先を目で追う、幼いネム。桜の花びらを髪飾りに、歌う少年。おかしくなった街と、それでもやってくる明日。みずうみのまわりでねむるだけの、ひと。生命。この星の、という共通項。

 ランチ。めんどうなので、カップやきそばにして、目を覚ましたばかりのあのひとは、ベランダから、春のおとずれとともに、変わってしまった生まれ故郷の景色を、ながめている。表面上はさほど、変化はないのだけれど。中身はもう、腐りはじめていることをおしえてあげると、あのひとは、そう、とだけ答えて、紅茶を二杯飲んだ。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-05

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