共生

 未明。さくらのおわり。だれかの声がしたので、目を覚ました。くじらの夢をみていた頃。うつくしい空洞となった、きみと、街。森のどうぶつたちが、いつのまにか棲みついている。証明写真の機械のなかでねむる、きつね。ショッピングモールの緑化された屋上で遊ぶ、りす。コミュニティセンターにあるマッサージチェアでくつろぐ、くま。
 雨が降り、川に流される、花びら。白い、花だまりができている。まいにち、幸福であるのだから、それでいいのに、にんげんは、幸福を甘受しすぎると、歪みを求める傾向にある、じつにへんてこないきものだと言ったのは、新人類。月のひとだ。たばこの味をおぼえてしまったために、地球から離れられなくなった。金色の瞳で、わたしたちにんげんを、愛おしむ。コーヒーには砂糖を、どばどばといれる。ふたりで、公園のブランコをこぎながら、ジャングルジムのてっぺんで吠える、おおかみをみているあいだにも、春は、ちょっとずつ欠けていく。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-04

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