失恋
繭。ちきゅうというなまえは、うっすらとおぼえている。
燃えていたのは、無機物だったか。あの頃、ちいさな都市に満ちていたのは、生命の肉感だった気がする。七日間、降りつづけた雨で、灰は流れて、耐火性があったのか、公園の遊具の残骸がたたずむ様子は、むなしさを煽るだけだった。骨となったビル群。真実は、いつも、ぶあつい雲にかくれていて、月の光も届かずに、夜はただ、すべてを平等にして。
ひばりが呼んでいる。
歪んだ朝。
海で眠る先生。
わたしが捨てた、恋というもの。おぼれるほどのものも、まやかしも。
太陽に照らされて、輝く。一瞬。
美術館に展示されている彫像のニア・リーは、先生の恋人。
永久的遠距離恋愛。
想像して、嘔吐する。
失恋