四月の雪

 ほんものはいつも、水の底で。ゆら ゆら と。
 景色。モノクロだった春の日に、指のすきまからこぼれおちたのは、あたたかい血にも似た、愛。荒廃した街で、おどるだけのアンドロイド。ぼくらの生まれた意味を、だれも、おしえてくれないままで、未来、という不可抗力で訪れる不確かなものに、光など。
 かいぶつにかじられた。神経。きっと、端っこの方。
 あざやかだったのに、色が欠落して。花。ただの肉厚の、舌のよう。
 粉が溶け切れず、表面にかたまりとなって浮かんでいる。カフェラテ。ビターチョコレートと、他者の失敗をおもしろおかしく笑うだけの、悪趣味なテレビ。洗ったお皿を拭きながら、冬のコートをいつクリーニングに出そうか悩んでいる、しろくま。異常気象を嘆いてる。
 四月。

四月の雪

四月の雪

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-02

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