凪ぐ

 偏愛。おぼれる魚。群れで、光ってる。水面は、うつくしい、平らかなままで、星の声も届かない。孕んだ、やさしさに埋もれて、爪を立てることも忘れた。ねこ。きみのひざのうえで、まるまっている。ぼくらが、うまれるまえの歌を聴きながら、明けない夜のゆくえを想い、クリームパンをかじり、ためいきをこぼし、森に侵食されつつある街の、闇に溶けた深緑の樹々のざわめきに、あわだつ。

 へいおん。
 それが、すべてであれば、そうすれば、生命体の呼吸は、つねに安定し。
 だれをきずつけるようなことも、なく。
 おだやかに。
 おだやかに。
 画面の向こう、海を越えて。

凪ぐ

凪ぐ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-31

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