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 ひだまりで。かなしみを溶かして。目を閉じて、みえた。春のおわり。夏の影。花の咲く、肺。水平線の向こうで、燃えているもの。真夜中のアイスクリームやさんに満ちる、愛にも似た、なにか。幽霊が欲するのは、モカ、ストロベリーチーズケーキとの、ダブル。星屑が降る街で、星屑をひろいあつめる仕事をしている、きみが、夜明けの頃に感じる、むなしさを、共有できないままで。街頭ビジョンが告げる、二十五時の、季節はずれの雪予報。
 にせものばかりが行き交う。
 公園の、池にいたはずのワニが、いつのまにか、駅前の広場で、石像になっていた。容易に、待ち合わせにつかわれることとなったのだ。ピザを食べながら、ワニの石像のまわりで、うつむいているひとびとを観察する。四角い電子板中毒。みんな、ひとりぼっちを気取っているのだと、ワニが、嘲笑っているような気がする。わからないけれど。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-29

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