rot
望んでいることのはんぶんも、叶えられないままで。消失する夜。ふいに思い出す、子どもの頃に水族館で観た、イルカの、りんかく。香炉のはだに、指をはわせ、ふるえるように微笑む。占い師。寂れた商店街で、二十四時から、二十五時のあいだだけ、相性占いをやっている。遠くにきこえる、車のクラクション。だれかの悲鳴みたいだ。
森の洋館で、ひとりぼっちで生きている。夜明けのバケモノ。しんじられないものばかりで、世界、わずかの期待もしていないから、冷凍睡眠という選択は、自殺行為に近いと思いながら、透明なガラス越しに、きみの寝顔を眺める。そこは庭なのか、森なのか、夜明けのバケモノが育てた花が、モノクロに変わるとき、静かに朽ちていく街の一部も匂い立つ。
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