ひとりになる
ぬま。通し番号で管理されている。あのひとは、八番目のひと。気分的に、愉快、というのとは真逆のものを抱えて、春の雨に湿ったアスファルトを、蹴る。ある日、とつぜん、眼鏡をかけるのをやめた。あのひと。深海の色を濃くして、夜は深まり、まるい月は、ぽっかりとあいた、あなみたい。臆病者の歌声は、やさしく。八番目のあのひとは、一から七番目のひとびとが、みんな、沼に咲く花の養分となったことを憂い、泣き、怯え、振り切れて、それから、わらう。
肉が引き攣る感覚に、睡魔は遠ざかり、わたしは孤独を食む。
ひとりになる