三月のポエジー
(二時のこと。人形が踊る。街を、狂った誰かの妄言が支配する。珈琲を飲んでいるあいだに、夜ギが詩う。春の儚さを。私が爪を伸ばしても、意味はなく。あのひとたちが冷凍睡眠に入っても、星は救われない。刹那。海水魚の眠りを妨げるのは、人工の光。サーチライト)
あわれみは、いらなかった。
きみだけがいれば、それでよかったのに。欠けたものを求めることを、罪みたいに、裁きたがる。電子の亡霊。食欲はわかないけれど、メメントの淹れてくれた紅茶だけは、喉をとおる。モリと分裂した日のことを、まるで、昨日のことのようにいつも話してくれるね。アロワナが泳ぐ水槽。ちいさなカフェの、かぼちゃのポタージュと全粒粉パンがお気に入りだった。カフェの店員に、分裂周期は、と、ふいにたずねられ、こたえられなくてこまったよと苦笑いを浮かべてる。外は雨で、冬がまだすぐそこで、静かに揺蕩っている。
三月のポエジー