暗闇の夜に
泣きながら笑っている、きみが、どうか、こわいものにおびえませんように。
夢見る頃をとっくに過ぎて、スーパーマーケットのイートインスペースで、だれの視線も気にせずカップラーメンを食べられるようになったと、あのひとは言った。女の子になりたかった男の子が、おとなになって、女のひとになれないまま、男のひとでありつづける現実を、すこしだけ痛ましいと思った。
(自由、とは)
社会という名の監獄で、鎖に繋がれて、ひきちぎれなくて、もがいて、暴れて、傷つくばかりだったのは、あの子のお姉ちゃん。この星の、欠陥部分をみつけても、どうにもできないと言い切った、わにさま。わたしのなかの、ぼく。ぼくのなかの、わたし。きみのなかの、わたし、もしくは、ぼく。あらゆる生命のなかの一組織でしかない、ひとびと。
光を。
暗闇の夜に