いとしき polar bear

 地下室にて。白い花を青く染めて、だれかの詩に戒められる、途方もない空気のような、不安。みずうみの底に、沈んだ月の欠片を、新人類たちは潔くあきらめて、地球に寄生をはじめましたというニュース。いみがわからなくて、こわい。
 雨。
 黒いヴェールをかぶった少女と、犬。
 暴力性の高いあのひとが、唯一、おだやかに眠れる、森。
 忘れられた故郷を想う。白熊。わたしのために呼吸をして、オムライスをつくって、やさしみをあたえてくれる。無償で。近所のお花屋さんのひとが、このあいだ、本屋さんで、しんけんに立ち読みしていた本が、拷問器具の詳細が描かれたものだったので、にんげんって、いろいろだなぁと思った。地下室にいる、きみとは、気が合いそうな気がしないでもない。春なのに、とつぜん、真冬に舞い戻った日。落下する、どっかの惑星(ほし)
 燃える。

いとしき polar bear

いとしき polar bear

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-18

Copyrighted
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