柔和

 さかなの楽園で。骨になって、泡になって、うつくしいなにかになって、もう、だれもふみこめないところで、あそんでいたい。まお。ぼくの存在を、わすれてしまっても。気にしないよ。暴力的に、白い花の海につきおとされて、唐突に恋しくなる。動物園でみた、ねむたげなライオン。
 かぞえる。
 うまれてはきえてゆく、あい、など。
 深夜に、ふいにきこえる、かなしみにみちた吐息、など。
 道徳的模範行為をくりかえす、デンパのことを、ウツは、こわれたのだと嘆く。とじこもった、まおを、ぼくは、あかるいばしょに導くつもりは、さらさらなく。都会は、いつも無自覚に、やわらかいものを求めていて、金属や、アスファルトのつめたさに、うんざりしている。
 世界がはやく、やさしいだけの国になればいいのに。

柔和

柔和

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-11

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