天 / 空

 こどものための国で、ただ漠然と、生きている理由をむりやりにさがそうとしている。ぼくら。
 せんせいが、だいじょうぶ、という。
 なにがだいじょうぶなのか、よくわからない、だいじょうぶ。でも、せんせいのいうことならば、だいじょうぶなのだと思いながら、球体水槽のなかに自ら入っていく、自殺志願者たちをながめている。午前二時。もうすぐ朝になるよね、と、(てん)くん。そうだね、と、ぼく。この街は、いつになったら眠るんだろうね、と、天くん。眠れないから、しにたいひとがふえるのかも、と、ぼく。慢性的な不眠症なのかな、と、天くん。さあね、と、ぼく。
 空の月は、はんぶん。
 せんせいは、きょうも、ぼくらのために、だいじょうぶ、と、うそぶく。
 ネオン色に染まる、まるいゆりかご。

天 / 空

天 / 空

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-09

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