今は、とにかく80にしたい私の星空文庫

先日の土曜日、私が家でお酒を飲んでいる際、足の小指をものすごい勢いでぶつけてそこから血が噴き出した。

最初はよくわからなかった。お酒を飲んでいたし、おでんをレンチンして食べようという事ばかりが思考の中で先行していたためだ。

ただ、床にも結構な量の血が、点となって、場所によっては線となって、まるでジャクソンポロックの作品のように、それは言いすぎだけど。なってるのを見て徐々に、
「あ、ヤバイ」
と思った。思い始めた。

ぶつけた小指の痛みもひかない。恐る恐る座って見てみると、とろとろと小指から血が出ている。痛みはじくじくと続いていた。見ると小指の地面との接地面、足底部が裂けてぱっくりいっていた。

「そんな勢いでぶつけたんですか!?」
私は!

シャウエッセンのソーセージが噛んだ瞬間ぷちって行くみたいに裂けてる。血がそっからどろどろ出てる。赤い足の内部も見える。見えた。

床がジャクソンポロックみたいになるのも頷ける。頷けた。お酒を飲みながら思った。お酒をかけてみようかななんて事も思った。映画やドラマや漫画とかであるみたいに。

ただ、とにかくこのままでは眠れないと思ったので、急いで血を拭いて、床も拭いて、傷口を清潔にして、オロナインを塗って、ティッシュで足の小指を巻いて。靴下を履いた。

そんでとりあえず一回夢なんじゃないかという期待を込めて寝た。寝るとき靴下は良くないと年始に実家のあさイチで観たのになあ。って思いながら。

起きてから改めて傷口を確認すると、やっぱり足の小指の足底部は裂けていた。

ぱっくり行っていた。しかし、寝る前に半分寝ながら必死こいてやった応急処置が功を奏したのか、あとオロナインが良かったのか、巻いたティッシュが良かったのか、靴下を履いていたのが良かったのか。全部なのかわからないけど、ティッシュに多少の血が付いてる程度で、もう血はたれていなかった。

んで、

そっからが不思議だったんだけど、多少の血が、私からしてみると、体感的には300mlは出たような気がする血。
「死ぬんじゃないか?」
なんて。
「小指は壊死するんじゃないか?」
なんて。
「足底部のこの裂傷が上まで行って、小指の肉がこそぎ取れるんじゃないか?」
なんて。

そんな事を考えながら不安に苛まれた状態で寝たのに。

寝て起きたらすごくすっきりしていた。

二日酔いではあったけど、でも、何だろう。すっきりとしていた。頭も。
「あれもしなきゃ、これもしなきゃ、あ、あとあれもしなきゃ」
と、いつも考える私の頭。で、それでやる気が無くなって、やらなくなる私。

なのに、寝て起きたらすっきりとして、余計なことを考えなかった。だから、傷口を改めて清潔にして、オロナイン塗り直して、それからゲームとかした。いつもはゲームするまでも時間がかかるんだ。やろうかな。どうしようかな。やったら時間吸われるだろうなあ。

そういう一切が無く、スムーズにゲームが出来た。

あと、心なしか元気だった。いつもはもっと、
「うあああ」
って寝起きはなって何するにも時間がかかるのに。

「うおおお!やろやろやろ!」
って元気だった。

不思議で仕方なかった。原因は何かと考えると、出血しかなかった。

「血って多少出した方が元気になるのか?」
と思えた。

考えてみれば、鼻血以外で、出血するなんて久しぶりの事だった。鼻血とあと指のささくれを剥いて血が出るとか、そういう時以外の出血は、数年前に転んで足の脛に穴が開いてすごい出血した時以来。

あの時も多量に出血して、その結果元気だったかどうかは覚えていないけど。

「なんだ今の私はこれ」
足の小指をシャウエッセンして床をジャクソンポロックにした今回は、思いのほか元気だった。元気だし、すぐに決断できるし、バイタリティにあふれていた。歩行にはちょっと難があったけど。

でも、普段の何もしない自分より数倍は元気だった。

「私は血の気がありすぎるのか?」
と思った。

「たまには血を出すか、抜いたりした方がいいんじゃないか?」
何の確証も無いんだけど、でもそう思った。

献血に行こうと思った。自分のような不健康な生活をしている不健康人間の血が求められているのかはさて置き。

献血に行こうと思った。

ただしかし、これを成功体験ととらえるのは怖い。

献血には期間も存在する。

「なんか今日は調子悪いなあ。血だそうかな」
って、なったりしたら怖い。自傷行為とかしだすかもしれないし、ハマるかもしれないし、傷口が治らなくなるかもしれないし。

でも、嘘でも何でもなく、血を出してからちょっと調子がいいんだよな。

それは嘘でも何でもなく。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-23

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