密度

 夜に、鹿が鳴いている、森で、骨すらも、土に溶けた生命のことを想う。月からやってきた、ひと。濃い、と思ったとき、てのひらを掠める、獣の気配。たしかなもの。うまれたことが、よろこばしいのだとやさしく微笑む、アルビノのくまと、聖母のような、メメ。不完全なぼくを、むりして完全になることはないと、なぐさめてくれる。あのひと。古ぼけたお屋敷で、いつか、夜しかない国になるよう祈っている、夜の怪物が、ていねいにいれてくれるコーヒー。砂糖と、ミルクをいれなくても、甘やかに感じる。ぼくと、もうひとりの、ぼく。七年に一度の、分裂にあわせて、ぼくのまえにあらわれる。ルル。ぼくのすべてを、肯定して。あしたも、ぼくは、ぼくでいて。くまと、ひとと、怪物と、ぼくが織り成す。真夜中のハーモニーが、あのひとの胸を打って。それで。

密度

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-20

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