迷子

 ゆるされるのが、愛なら。ぼうりょくもまた、ひとつの愛なのか。かなりあ。母なる海が、ぼくたちを拒絶するとき。子宮にもかえれずに。ふたりで、もう、おわっていくばかりの世界で、ながめていた風景。灰の街。黒い森。ただ、静かに横たわるだけの海。透明になる。どうぶつたち。かなりあのつくったオムライスが、世界でいちばんおいしいたべものだと、信じていた日。かなりあからあたえられる、痛みが、ぜんぶ、愛に変換されていた。あの頃。植物園の、熱帯雨林の展示室で、極彩色の蝶を纏い、ぼくと、かなりあを憐れむような瞳でみつめていた。ネオ。泣く。砂のうえで、泣いているぼくらを、でも、抱きしめてはくれないね。

迷子

迷子

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted