純正

 やわらかな朝の、うしなわれた、希望という、まぶしいものに対する、若干の嫌悪。砂糖菓子の孤独。きみがみていた世界の、色彩。だれかの詩が、救いになる夜と、途方もない不安が、うまれたばかりの感情に滲んで、やさしいひとすらも、うらみたくなる頃。月からの新人類に愛を乞われて、ぼくが、ぼくではなくなるとき、あの、ぼんやりとつめたい空気でにごる、理科室のことを思い出して、せんせいが、とくべつにくれた外国のチョコレートの甘さに感動した日もあったと、ひたる。恋ではなく。とぎれる、音が、星の鼓動だとおしえてくれる。雲雀が、ホットチョコレートをつくっている、ナナのうしろすがたをながめて、美しさと儚さに、残虐さをまぜたら、あのこみたいになるねと言う。アルビノのくまは退屈そうに、ひとつあくびをして、ぼくのとなりで、九割がたはおもしろくないテレビ番組を観ている。ときどき、窓の外が一瞬、白むのは、宇宙で星と星との衝突が、くりかえされているから。もう、三千年ほど。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-18

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