ほどき


のかたちで凍った頬には
いつまでも霜が降りてこない

真夜中に聞いたタイヤチェーンを
異国の鈴の音と勘違いした
窓枠が鈍色にじわり滲んだのは
どこかに横たわる
鯨の骨が持つ熱のせいだ

道路脇にそびえた壁は
数ヶ月ばかりの地層になる
排気ガスとディーゼル車の轍と
すすけた空気が堆積した
雪の

地面も室外機も屋根も朝も隠された
そのあとは
だんだんと
ぬくい風が晒していく
元素記号の束、H2Oの抜けがら

マリンスノーみたいなぼたん雪
追いかけるここは、深海になる

ほどき

ほどき

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-26

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