白河夜船

あおい はる

 煙る。照明灯が霞んで。ひとつの生命が刹那、まばゆく。(あ)と思ったときには、月から正規ルートで降りてこれなかった新人類が、海のなかで赤く染まる。祈るバケモノ。跪く神さま。舞う少女。はだしで砂浜を歩く。きみ。瞳の色が、きれいだ。こんなにも醜い世界を、みつめていたはずなのに、眼球のフィルター、濾過して。クリアにした。
 すこしのあいだ、混沌とする海岸をながめていて、でも、なにもできないので。新人類も、バケモノも、神さまも、少女も、ぼくらでは持て余してしまうほどに、ごちゃりと、ぐちゃついているので、澄んだ瞳で微笑むきみと、手をつないで、街に帰った。とちゅうにあった、寂びれたホテルの料金表に、きみが微笑んだまま、けちをつけて、ぼくは、なんだか、ぼくをとりまくすべて(きみを含む)が、ひどく無機質なものになってしまったように感じていた。
 街は、長い眠りのなかにいる。

白河夜船

白河夜船

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-20

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