つるバラと鳥

 音楽は、鳴りやまない。
 しらないあいだに、コンビニはなくなり、学校は崩壊し、道路のアスファルトはめくれて、植物におおわれた。つるバラ。おもわず息をのんでしまうほどの、群生。しんじつは、葬られて、街からは、人工物が排除されてゆく。ぼくのとなりで、Ad-203L-NO型、通称ネオが、ガラス玉の瞳でビルの屋上から俯瞰している。おそらく、すべてがおわるまで、きみはそこに佇んでいるのだろう。花を咲かせたバラは、枯れてもなお、あたらしい種子を残し、増殖してゆくのに対して、にんげんは、もう、街が街としての機能を失った時点で、万死に値している。ぼくはぼろぼろのスマホを片手に、すこしまえに流行った曲を流して、感傷もなにもなく、ただ、なるようにしかならない現実を、ネオよりもきっとからっぽの肉体で、ながめている。にんげんは減る一方だけれど、ネオのなかまたちはつぎつぎとあらわれ、見たこともない美しい羽の鳥が飛び囀っていた。

 ぼくはこれから、だれと恋をすればいいのだろうね。

つるバラと鳥

Ad-203L-NO型 → アンドロイド / 製造ライン203 / NEO型

つるバラと鳥

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-16

Copyrighted
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