銀河通学

銀河通学

雪水 雪技

Twitter投稿詩まとめ54

からまわる、あい

私が回るから世界はからまる

あいしあいされている場合じゃないよ

そう言って駆け出した日からはじまった
影は口をあけて光は私を突き刺すけれど

ワンフレーズの上にあぐらをかいて
君は怠けているなんて言われたくない

進化、深層、震天
揺らぐ自分に、
私は怯えたりはしない

冬のバス停

それぞれの語り出した行に
マーカーを引いている人々
冷たくなった文庫本は流暢
バスターミナルでくりかえし
同じところばかり
にじむまで通して
手袋もつけない手は赤くなる
呼吸は白くなる視界は曇る
感傷と夢が世界を覆う
色彩豊かな白の世界
明日返却される
誰かの動機

季節は狂気を含んで

枯れないものに囲まれて
鮮やかな色は暴力になる
終わりのないものは
やがて自滅するけど
自ら終わらす時は
巻き戻されて再生

一番綺麗なものは後ろに見て
この先の木枯らしを無視する
優しい人たちのお陰で
四季は凶暴になるから
見せ物になる自然たち
笑顔が咲く虚構に拍手

暗号アート

模倣されることを恐れて
全てのアートは暗号化され
文字と数列の法則から物語を
座標と角度の関係から色彩を
私たちは見つける必要があり

美術館から流れる音は名画の信号
点描に落としたそれぞれの音階
浮き上がる女神像に目が回る

頭で見て
知識で聴く
未来式アート

分離誕生

史実と混ざり合う空想は
創生の頃を甦らせていた
自然の中で詠った日々は
未来永劫の記録にかわる
透き通る空気に屈折する
粒子に神秘を降らせて
宇宙と天は混ざった

天と地が分かれていない頃
言葉を持たず感情が浮かぶ
伝わることを見送って進む
人類が選択したあの日のこと

フラッシュに逃げる鳥を

淡々と続く夕焼け空
私は独りで哭く小烏
夕日閃光の果てに白
見つめた先に黒い雲
痛む瞳の奥には残像
残る心の奥はセピア
紅茶は冷めきって
誰もいない部屋
続きを望む声は
掠れた虫の聲哉

夕陽は漂ういつまでも
人の心が映すもの
カメラの奥に
感傷フィルム

習慣に飼い慣らされて

優雅な食事の後に
悲劇ドラマを観て
無感情に涙を流す

ルーティンとなる
喜怒哀楽の確認
人らしくある為

細かく分けられた
感情を味わう夕餉

小皿に取り分けた
様々な味の薬味を
舌の上に乗せては
感覚を思い出して
痺れることに安堵する

無味無臭の生活、その病

ジンクスの雲隠れ

ここに描いた矛盾は
金の額縁の中で嗤った
事象はコラージュされ
偽書は世界樹のオーナメント

さんざめく下界からの綺羅星
高天ヶ原に届き
天を穿つ光の柱

火球は願いを聞き流し
虹は足元を隠している
それでも歌い続ける
揃わない空への賛歌
神の見えざる手に
無為の指揮棒

果ての無い旅に果てた命

人はとどまらない
有史以前からの
大移動の果ては
未だに見えない
先を読み込んで
一歩踏み込んで
またここから
出て行こうと
前進する精神

意味は無くとも
そうしたいこと
続けるうちには
当たり続ける霰
折れない小枝
しなるため
前後も無く
未だつづくは
果てのある命

文化的木乃伊

古びた王国
砂の中の王冠
誰かが統治する
ルールの上に咲く
人々の暮らしは化石

石化する文化は
旅人の足音で
目を覚ます

もう一度輝く神殿
舞台を演奏を歌を、
求める人が居るのなら、
もう一度咲きたいと希う。

蘇る声と音が
誰もいない王国に
再び薔薇色の夢を魅せる

存在の地点

百年前の写真に映る
知らない顔と風景
懐かしさは何処から来るのか
わからないまま開いたアルバム
私のいない時代の出来事とか
私と似たような悩みを持つ人とか

今という地点から
丁度百年前の
この場所から
馳せた思い

そこにいない私に
何かを告げに行く

受動の美術

似せられた形で
地上に縫い付けられ
受動的な暮らしの中に
わたしの原形の幻を見る
美術館は祖先の影が濃くなる

陰影を分解して
割れたグラスで占う
知識は食べ物と変わらなかった

林檎の赤はわたしの目を奪う
作り物ほど人は惑わされる
同じにおいがすれば
どうしても惹かれる

おみせやさん

何も無いを知らない
この世に来てから
ごちゃついていた
この部屋にあるもの
価値は誰にもわからない
贋作をたくさんそろえて
まがいものを陳列させて
お店屋さんになりたかった
白いロボットをさらに白く塗る
バスケットの中にはおやつとおもちゃ
なんでも屋さんは商いが下手だった

印象派

凹凸に当たるライト
窓を開けたあの日の感動
時を超えてその瞬間に会う

光は彼の目の奥に印象だけを置いた
実体のないものに焦がれつづけた日々

道の先にあるものより
草花のきらめきに惹かれ
道のないところを歩き出す

夢より美しく
空想より輝いて
今日に印象が残る

はじまりの船

船が三隻
宇宙以前に浮かぶ
それぞれ名前も無い
船が通れば海は生まれて
それぞれの役割は後付けされた

無垢と自然、そして無為
大海が生まれてから天の概念
惑星をかたどってから空間の認識

船の行方はわからないから
神秘と事実と法則を描き
不安を取り除いて
生きてきた

銀河通学

砂時計は銀河と繋がる
懐中時計はパスポート
天の川もアンドロメダも
通勤通学に皆流れていく
日々違う景色を車窓から眺めて
今日は誰かの郷愁の大パノラマ
野焼きの匂いと赤とんぼ
夏の田園と入道雲
涙が溢れたら
柱時計の音
終点の合図

名前の無い夢物語

兎がテーブルの上で跳ねる
兎の影を追いかけていた

スペードのエースが叫んで
クッキーは皿の上で弾けた

金色の首飾りはプラスチック
あの子は本物のお姫様だった

レースのハンカチ野原に敷いて
毎日知らない誰かのお誕生日会

兎の影は飛んでいく
兔を置いて空へ飛ぶ

大音響の不協和音

鳥の声が白い空に譜面を描く
私の足音は世間の音とずれて
不協和音だと苦情が来た

いらないのは私ではなく
世界の方だって呟きながら
泣いている朝

鞄の重さが私を繋ぎ止める
白い空に飛んでいきそうな
心許ない自分を持て余して
不協和音を奏でている
世界が卒倒するように

極小の記憶媒体、人の夢

最小になるべく
人類は巨大を造る
最小こそ最大との
遺伝子の情報に従い
巨大建造物に触れる
記憶は最小
保存される為に

誰も消えたく無い
だから小さくなる
小さく在りたい人が
高い高い塔を眺めて
安堵のため息をつく
雲の上を飛ぶ機体に
必死に捕まりながら
最小を思って

光速に耐えられない

擦り切れた今日を張り合わせ
光に追いつこうと再び走る
笑い声をかき消しながら
必死になるほどに
足はもつれた

カーテンから差し込む光は
何かを探しているように見えた

気がつけば
日は暮れて
部屋には私だけ
取り残されたまま

私も一緒に探したくて
追いつこうとして

銀河通学

銀河通学

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-05

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  1. からまわる、あい
  2. 冬のバス停
  3. 季節は狂気を含んで
  4. 暗号アート
  5. 分離誕生
  6. フラッシュに逃げる鳥を
  7. 習慣に飼い慣らされて
  8. ジンクスの雲隠れ
  9. 果ての無い旅に果てた命
  10. 文化的木乃伊
  11. 存在の地点
  12. 受動の美術
  13. おみせやさん
  14. 印象派
  15. はじまりの船
  16. 銀河通学
  17. 名前の無い夢物語
  18. 大音響の不協和音
  19. 極小の記憶媒体、人の夢
  20. 光速に耐えられない