あなたが居なくて寂しい

あなたが居なくて寂しい

お正月に田舎へ帰ったら、弟が、飼っている犬を連れて来ました
ウィルス騒ぎがあったので、2年振りの帰省
弟は現在、同じ市内の別のところにお嫁さんの家族と住んでる

「まめ柴」だそうです
私が帰るのは、いいとこ1年に1回、なので
その子は随分前から弟の家族なんだけど
私はそんなに馴染んだ訳じゃない
でもお互い覚えてる

17歳になってた
スマートな、おしゃまなルナお嬢さん
という感じだったのですが
私の記憶の半分くらいに
もっとスリムになってた
触ったら骸骨の形がそのまま分かった
後脚の片脚が、少し内側に入っている癖があるので
頑張って立って歩こうとすると、蛇行してしまう
身体の長さ分、孤を描いて

それでも頑張って、時間をかけて歩いて
こんにちは、と挨拶しに来た

実家を退出したときは
いつものように弟夫婦の車で、駅まで送ってもらって
彼等が前、私が後ろの左
今回は後ろの右にベビーベッドが乗っていて、その中にルナ

唐突に
ルナが啼く
私はベッドの中のルナに首を伸ばす
弟がびっくりして
信号待ちのときに運転席から後ろに手を伸ばして、そっと撫でる
どうしたの、いつもこんな風に啼かないよね
でも、ルナが啼く
私はルナを見つめるけど、彼女には私は見えないだろう

そうだね
次に会えるか分からないね

彼女の声を人間の言葉に翻訳出来ない
彼等の声はとてもシンプルで
言いたいことはすごく伝わるのに、人間の言葉に翻訳出来ない

帰りの電車の中で、思いついた
そうか、日本語に無いだけだ
きっと
I miss youだ
あの頃学校では「あなたが居なくて寂しい」って教わったけど
だとすると
居なくなるのは私じゃなくて、ルナだよ
てなるけど
居なくなる側も
I miss you
て言うに違いない

彼等の感情はとてもシンプルで
気持ちを表すのに
人間みたいに、お返しを期待しないんじゃないかなと思う

人間は、誰かを愛したら、お返しに愛して欲しいと思ってしまうし
人間は、何かしてあげたら、感謝して欲しいと思ってしまう
それは当たり前のことだ
でも私は、その当たり前のことを感じ取ってしまうことが多くて
なかなか難しい

犬でしょ
何回か会っただけでしょ
大往生で死ぬんでしょ
って思いますか

いいえ
私には
いいえ

2022年1月3日

あなたが居なくて寂しい

あなたが居なくて寂しい

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-03

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