三片

 ほどける

それがもう特別じゃなくなる
ただそこにそうやってあるもの、になる
ほんの数ヶ月前までこの音でそっちまですぐに飛べたのに、
それは私の外側で鳴っている
いまではこんなに静まり返っている
その音のずれとすれ、その天心ときまぐれが唯一だった
けど、それらはほどけて消えていく
風景と時間の中にかえっていく



 マテリアル

体の一部の止まっていた時間が思いだしたように動き出す
おりがはがれて ひとり立たされている
空間が目の前に広がっている
視線の射程距離が変わる
なつかしいのか、未知なのか、を体はたしかめようと探る



 冬のぬけみち

助からない密室で恐怖するのを放棄した眼、
一瞬でガラスが破裂してそっちに傾く
けっして繋がったりはしないが、透明の幻の上に乗ってる(幻はよくないとわかっている)
居つくことのできない追えない新しさ
私のまぐれの魂を連れだす

三片

三片

ある音楽を聴きながら書いた三つのシーンです。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-12-24

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