夜の帳3

ここからが2020の7月辺りから2021の7月あたりでしょうか。

エピソード21

こんばんは、私の可愛いセキセイインコ。
今夜は、私とても威厳に満ちた方々の夢を見たの。

嬉しくって是非あなたに伝えなきゃと、こうして現れたわ。
なんたって半年ぶりね。

すっかり落ち着いた風格が出来てきたわね?作家先生。
けれど、あなたの書くミステリアスな主人公は私かしら?
今じゃ、この難解な本の暗号の謎に果敢に乗り出し、波に乗り戯れている
いるわね。
ふふふ、嬉しくもあり、あなたには私がそう見えているという
確信が深まっているわ。
あなたからの愛を感じて私もあなたに愛と忠誠を誓いに来たわ。


さぁ、燃えあがる夜を少しクールダウンして、あなたの頭に私の見た夢を伝えてあげるわ。


それでは、東方の3賢人のお話を。

古代のどこかにある国のお話よ。
大きな戦いがあったわ、一国が大きく変わる激動の変化の前には暗い時間は
つきものね。

新しい猛者が戦いをやめさせるために、新たな戦いに挑んだの。
けれど、結局は同じこと、恨みや諍いに焦点を合わせている限り、
内容と言い野蛮さといいやっていることは同じね。

それを嘆き、民衆の飢えや苦しみを短期で終わらせるため、3賢人が
たちあがったの。

戦いに敗れた側の市民と兵士は苦境に立たされ、長く長く砂が続く道を
捕虜として歩まされていたわ。
でも、勝った側には別の狙いがあるの。
金品を強奪して、死ぬまで歩ませることが目的だから。

そうね、とても恐ろしいわね?
何をもって勝負と言うのか、そして、どちらにしろ現実は同じよ。
どちらも紙一重の状態、つまり生きながらしぬか、死ぬかよ。

捕虜は弱ってきていた。
哀れに思った勝った側の責任者が最後に宴を開いてくれたの。
少しの酒と干し肉をあてに皆で丸くなり、故郷の歌を歌い続けて
一夜をすごしていたわ。

でも、ひそかにこの捕虜の中に3賢人が民に混ざり潜んでた。

まだ若く、足腰の強い老若男女と10歳以上の子供たちを先頭にまだ
生き抜くと瞳が語る者たちを並ばせた。
これが、第一陣ね。

更に、2千人の列の後に、少し暢気な、けれど、まだ希望をもっている
人々を次の隊列に。

そして、最後に酔っぱらい人より多くの酒を飲んだ者たちを最後の隊列へ。

その所々に勝者側の兵が馬に乗り見張っている。
この兵たちは3賢人にも、隊列の並び順にも気づかないわ。
なぜなら、誰よりも強欲に酒を飲んだから。

先陣が、笛の「ホーウ、ホーウ」と鳴く音と共に進みだしたわ。
ここは、砂漠地帯。

次に、第二陣の賢人が「ホーウ、ホーウ」と笛を響き渡らせる。
この風の少なく、響く笛の音と月の光と砂の足跡のみを頼りに民は
ついてゆく。
そして、第三陣は、さらに後に「ホーウ」と響かせる。

夜明け前の月の位置が東から真ん中に差し掛かる頃、3賢人の笛も
ザッザッとい足音も続いてゆくが、少しづつ歩が乱れ始める。
皆、だんだんと互いの手を握りあい、手を引きあってゆく。
脱落者が出ないよう、砂漠で迷わないように。
互いの力と熱を信じ、笛の導きを信じて。

そして、とうとう互いの「ホーウ、ホーウ」、「ホーウ、ホーウ」、
「ホーウ」が聞こえなくなる。
何故ならば、月の位置を頼りに星座の位置を頼りに3方向から
湧き水の出る地帯、湖面のある地帯を目指しているからよ。

が、3賢人とて人間だもの。
一晩吹き続けると、知恵のまわる若者が代わりに3時間づつ交代で笛を
鳴らし始めた。
第一陣、第二陣と順調に進む。

そして、第三陣の酒の飲みすぎてふらついたものが多かった陣形は、バラバラ
となり、一部脱落者が出て来ていた。
が、酒が抜け正気に戻った者たちは必死でついてゆこうと歩いている。

皆、互いの足の感覚を頼りにひたすら歩く。

三日三晩歩いた第一陣
三日二晩歩いた第二陣
三日歩き通せた第三陣の少数のみ
順に湖面の近い水の出る場所に辿り着く。

賢明な協力しあった第一陣が、水の使い方を賢人より教わる。
雨水をため、湖の自然の流れに逆らわず生活用水に引く技術と、
小麦の作り方を。

第二陣が、その第一陣がつくりあげた食料をもらい、家や橋をつくり
街をつくる。

そして、第三陣は、商売を始める。
元々が活発で明るく、競争意識が高かったからよ。

皆、それぞれの場所と個性を生かし合う道を選んだの。
そうして、約二千年、この地域の水が干上がるまで平和に満ちた
治世が行われたという話よ。
地形の水と動物と草、豊かさの差はあってもね。


さぁ、あなた、今あなたのいる時代も新しい夜明けが近くまで来ているわ。
3賢人になれるほど、己を磨何ができるか、私はあなたにとても期待しているの。
きっとこの国は、大きく変わるわ。
どうせなら平和な個性あふれる生き方をして欲しいものね。
そうね、あなたはとても立派になったわ。

いいわ、今日は私の全身を使って今までの貴方の頑張りを抱きしめるわ。
さあ、今夜はこうして一晩中一緒に眠りましょう。

あら?この服を脱がせたいですって?
私のハリセンが炸裂するわよ?ふふふ。

あなたに、平和への協定を締結させる本でも書いて欲しいわね。
難事業こそ、難題で偉大だわ。
そして、その時私の体も愛も全て差し上げるわ。
キスもどんどん深く激しくして差し上げるわ。

あなたの感覚や仲間の60人を頼りに進みなさい。
互いの個性を生かし、深く議論し認め合うの。
そして感謝のハグをね。

エピソード22

こんばんは、わたしの可愛い小鳥さん。

今宵も美しく潤んだ月が出ているわね。
はじめてあなたの前に現れてから、もうどれくらいの月日に
なるかしら。

今日はあなたに贈り物があるの。

そういうと、本の精は書生に抱きついている。
そして、立ったまま本の精が軽く嘴で啄むようにキスをする。
書生の本能に火が付き、啄みから激しく唇を噛むように、貪るように、
本の精がまた優しくゆっくりとしたペースに持ち込み、そっと
舌を絡める。
書生の興奮が伝わる、そして本の精は書生の熱心さが可愛くて
吹き出しそうになっている。

そして、ふいに尋ねる。

あの約束を覚えているかしら。
あなたが立派な男になるとき、私はあなたのものよ。
と言った事を。

もちろん、今がその時だろ?
と書生。

そうね、立派になったあなたのチェックをしないとね。
ふふふと本の精が微笑む。

そう、あの出会いから早11年もたっているのだ。

あなたは随分と良い男になってくれた、私のささやきかける意志を
感じ取り、いたずら心を感じ受け入れ、自分の意志を多くの
素晴らしいアイディアとして形に残し立派になってくれたわ。

さぁ、今宵情熱のまま逢瀬を重ねましょうか。
そういうと、本の精は書生の腕に身を預ける。

と、その途端、本の精は悟ったのだ。
この書生、私の見間違いでは無ければ、随分と良い男ね。

今まで、楽しく彼を育て上げる事ばかり考えていたけれど
良く見ると青年から、たくましい男性に変わっている。

良いわ、すこしおじさま好きの私の範疇に手が届くくらいに
仕上がっているわね、ふふふ。
本の精は、実は情熱的で理知的な紳士が好みなのである。

さぁ、約束の燃えるような夜を。

ふふふ、どんな激しく甘い夜を過ごすのかですって?

もちろん、初めてあなたが私にしてくれた通り、添い寝から
はじめましょうか。
ふふふ、おさわりまでは許可してあげるわね。

エピソード23

こんばんは、私の愛しいカナリア

今夜は私、あなたに会いたくてなってあらわれたのよ
あの夜から、不思議と私のなかにある愛するというエネルギーが高まりつつあるのね

この愛のエネルギーは偉大よ?
なぜならば素晴らしいインスピレーションが浮かんだり、原子を共鳴という形で動かし影響を与えることができるの、まさに光のようね?
その結果、美しい奇跡のような現象を生み出すのよ?
逆を言えば、この愛のエネルギーなくしてはなにものも生み出せないのよ?

あなたと私がたかめあうとどんな変化が起こるのか見てみたいものね?ふふふ

少なくとも私はあなたに愛を注いできたわ?囁く愛の言葉がインスピレーションに繋り、あなたは私の意思を受けいれ繋ぎ、現実の世界に文章として世に放ってくれたわ?
またあなたの文章に影響を受けた人々へと愛は繋がってきたものね
そうして愛は循環し、この感覚に目覚めた人々が増えてきたわね

とても素晴らしいわ、あぁ、燃え上がりそうね

あら?
あなた泣いているのね?
ふふふ、あなたと私の逢瀬はまだ始まったばかりよ?これからもずっと続くのよ?

我慢して我慢して、堪えきれず放つ宝石、
その美しい宝石のような透き通った涙は私大好きなのよ?
本の精がそういうと涙にキスをしながら、なめとってゆく。
甘く艶やかな吐息がかかり、書生が、本の精を強く抱き締める

さぁ、今夜はあなたの夢を叶えてあげるわ?
そう伝えると、書生は本の精を抱えてベッドに運ぶ

逢瀬が始まるかと思えば、書生は本の精の髪を優しくなではじめ優しく語りかける

エメール
今は少しだけ君とこうして抱き合っていたい、そうしていると優しくあたたかい感情とエネルギーが体に入って閃きが宿ってくる、まだまだ書ける気がする、これが愛なのか?

ええ、そうよ?
ふふ、あなたも感覚として会得してくれたのよ、愛の魔法を
あなたの前にあらわれて、出会えて本当に良かったと思っているわ

ふふふ、こうしてあなたの隣にいることが私は好きなのよ?

そうして、キスをかわしあう、吐息さえも吐けないようにずっと激しく求めあう
唇や舌をなめ絡ませあい、そして時に吸い上げる、そのたびに甘く柔らかなしびれが脳内に響きあう

ふふふ、エメールがそう頬笑むと書生に火がついたようだ

が、気がつけば空が白みはじめている、本の精が薄く消えかかってきている

そう、本の精は夜の帳にしか会えないのだ

あーーー
書生はあまりの事に悔しがっている!

ふふふ、あなた、がっかりしないで?
またすぐにあらわれるわ?
今度こそは熱い逢瀬を、時を越えて約束を果たすわ?

そういうと、本の精は消えていた

エピソード24

そんなに撫でないでちょうだい、くすぐったいわ。
そして筆圧を強くしたり弱くしたりして私の反応を試してはだめよ?

忙しくてもめくるめく官能的な一夜にしたいわ

さっきから、あなたの握る万年筆のサラサラした音とペン先が私の体を
通り過ぎてゆくの。
そして、そうね、あなたが私の反応を楽しむように強弱をつけたり、
つまんだり撫でたり……そのたびに私は忙しく反応を返しているの。

今執筆に大忙しなのね?
閃きが泉のように溢れ湧き出ているあなたのミステリアスなヒロインに
なりたくて、私はこうして原稿に身を宿しているの。
私は、あなたの書く小説が大好きなの、もちろん仕事をこなす姿も。
それに、あぁ、真剣な眼差しで感情の行方をダイレクトに私つたえて
くれるのを同時に感じる事ができるものね。
今夜は、あなたが私の体に書き綴る文章と感情を一緒に味わいましょう。

あら、私のスルタン、こうしてあなたと繋がれる喜びをあなたも
感じてくれているかしら?
ふふふ、こうして誰よりも先にあなたの読者として側で応援できるのは
とても名誉な事ね?

あなたの書く小説の世界の中で、この混沌に満ちた世界観の中で、
愛のある世界に治めるにはどうすれば良いのかを考えているのね?
ふふふ、とても難しい事を私のスルタンはテーマに選んでしまっているわ?
私も一緒に考えているけれど、頭がこんがらがってしまうわね。
古今東西たくさんの英雄に哲学者が挑んだ難問だわ?

でも、考えてもみて?
長年出来なかったことが急にできる事はないのよ、ただそういう愛のある
世界にしようと意識し頑張る子は増えるけれど。
ならば、それで良いじゃない?

以前、あなたに教えた事を思い出して?
世界の平和のバランスの大切さを、そして、生き物の尊厳と大切さ
神様からくるこの大切な願いを、私が本の精としてあなたに伝え
イマジネーションを使いあなたに物語で表現してもらっていたわ。
あなたはとても頑張って仕事を通し立派になってくれたのよ。

そして、夏から秋にかけ違いが出てくると話したわね?
そして冬の今、神様の放つ約束が静かに訪れているのよ。

そして、数年の月日が流れ、人々は穏やかで賢く優しさに溢れた人々が
生き残り素晴らしい進化を遂げるわ?

私はあなたにこの進化を遂げて導いて貰いたかった、そして約束の今、
私はあなたのものよ?

ふふふ、さぁ続きを。
今夜はずっとあなたと繋がり見つめているわ、あなたとこうしてつながって
いる時間が愛しいからよ。
たまに誘惑をしかけるけれど、それも楽しいわね。

エピソード25

さぁ、始めましょうか
そう艶やかな囁き声が聞こえると、本の精が現れた。

ふふふ、こんばんは、私のスルタン
柔らかい眼差しが微笑んでいる。

書生が少し怒った顔をしている。
ずいぶん久しぶりだったなと。
君の伝えてくる情報はいつでも難しい、今もこうして君の望むこと、
世界の平和のバランスの大切さを、そして、生き物の尊厳と大切さ
神様からくる大切な願いという難解な君から聞いた事を考えながら記して
いるのに!

その文句を書生の表情から受け取り、本の精が耳元で囁く

あら、あなたの怒りや悩みはこうかしら?
どうして自分の前に私が現れ不可思議な話をするのか、
自分は将来この不可思議な現象を通し何をしていくのか、
その先に何が待っているのかでしょ?
ふふふ

私は本の精なの、神のように人の人生を操ることはできないわ?
けれど、そうね、伝言を渡し長い目で見るとあなたに幸せになって
欲しいの、そしてあなたの作品を通して繋がる読者達にもさらに愛と
幸せのお裾分けをしたいだけなのよ。

例えばだけれど、あなたの読者には色んな仕事につき、色んな年齢や立場の
子たちがいるわね?
そこに、ぽんっとあなたの愛がつまった考えや問いかけを投げかけるとするわ?その問いに影響を受け、一人一人が自分の立場として受け取り考え言動が
変わり始めるとするでしょ?
繫がりがまた多くの愛を上げ、閃きや冴えとなりいろんな職種とまたは同じ仕事の仲間と組み合わさりまじり繋がり何らかの形で一気に全体で賢くレベルアップする現象が起こるはずよ?
新たな発見かしら?命を守る事かしら?豊かさかしら?
時間はかかるけれど、何年後かにはご褒美を得てくるのではないかしら?
その流れに乗れば満たされ始め楽しくなるわよ?というお知らせね。
ようは、愛を持って自分を高めていて欲しいという事だわ、ふふふ。

難しい事ではないのよ、ただ素直に神の作り出す流れに乗って自分なりの
愛を放っていて欲しいだけよ?
これは試してみなければ実感として分からないわね?ふふふ

さぁ、久しぶりに私のスルタンに会えたのよ?
そんな悩んだ顔をしていなくてもいいんじゃないかしら?

今夜、私とあなたの愛を高めあいましょうか?ふふふ

エピソード26

雨がそっと降り注いでいる。
こんな霧雨の日には彼女が現れる。

さぁ、待たせたわね、そう声が聞こえると、一瞬本が水色の光で
輝き糖蜜色の髪をした本の精があらわれた。

ふふふ、今日は時間を遡ってバロック音楽を奏でる音楽家の楽譜に
宿りチェンバロの音色を聞いていたの。

彼ったらマリオネットに操られた人形のように譜面通りに弾く事のみに
没頭しているの。
それもいいけれど、私なんだかつまらなくなってしまって少し彼の中の
感情が昂るように悪戯を仕掛けてあげたのよ?
だって譜面通りには練習すれば多くの人がこなせるけれど、彼と言う個性は
この世に彼一人しかいないじゃない?

私にちっとも気づいてくれない退屈な彼に飽きてきちゃって、とうとう
譜面から出て彼を驚かせてあげたの。
立ち上がって逃げようとするからお尻を蹴って落ち着かせてあげたのよ。
ふふふ、あの慌てぶりはとても面白かったわ?
そうして譜面だけじゃなく、あなたの心を表現しなさいってお説教
してきてあげたのよ?
今後彼はどんな成長を遂げるかまた見に行こうとおもっているの。


そこまでいうと
書生が怒りの表情をして、
君は僕がいるのに、違う男にインスピレーションを与えに行ったのか?
僕はずっと君と会えるのを待っていたのに!
と拗ねている。

あら、もちろん今のあなたが一番素敵だわ?
たまには、散歩して過去の本に宿ってみたり、今の時代のあなたに会いに
きたり自由にしているのよ?
私はミューズとして芸術家にインスピレーションを与える事が大好きだもの。

あぁ、あなたも本の世界に入り込めたらたくさんの芸術家に会えるのに。
私、本の精のマスターに掛け合ってみようかしら?

どう?
私と一緒に?

エメール、連れて行ってくれ、君の世界に

ええ、少しまっていてね、すぐ舞い戻ってくるわ?
そういうとエメールは再び光ると本の世界に吸い込まれた

エピソード27

本から光と共にエメールがあらわれた。

ふふふ、久しぶりね、私のスルタン。
今日はとても優しい瞳をしているわね、私もあなたに逢いたくて本のマスターとの交渉もそこそこにあなたの前に急いで現れたわ?

宙の図書館には、たくさんの知識のある本のおじさまが私に今か今かと知識を与えてくださるの。
けれど、とても難しくって私はいつも混乱しっぱなしなのよ?

そして、あなたを本の世界にお連れする許可をもらえたわ?
こうして一緒に本の世界に吸い込まれると、神様のお許しにより特別に
魂だけ時間の移動が可能なの。
もちろん、体は現在を生きているのよ?

だから、過去や現在や未来を魂と意識は移動してその世界観をみたり出会いを感じる仕組みなのよ?
けれど、代償として体がとてもとても疲れてしまうわ、少し眠らないといけないの。

さぁ、今日はバロック時代の厳格な方にあいに行きましょう?ふふふ
この方は音楽の基礎を作り上げた天才ね?
愛が高かったから閃として天界からの音が聞こえていて、それを楽譜に
書き起こしていったのね、愛が高いから子だくさんね、ふふふ。


私が本のおじさまから聞いた話だと、クラシックと言うものは最高峰の音として位置していて、たまに孤高の天才が天界の音を聞いているのだという事よ?
けれど、そんな天才はたまにでいいの、ふふふ、本当に大切な事は皆に分かりやすく愛を届けていける事なのだそうよ?

その愛のさざ波がとても心地よいほど、その幸せが拡がり愛の理解を高めるのよ?ふふふ
楽器や声という音の振動には細胞に届き活性化を促し共鳴させることができるそうよ?
それがリラックスを生み脳に穏やかさや、また安心や安らぎをもたらすのね。
つまりより良い心地よい回路を開き始める効果があるの。
これは私が本の精を始めたばかりの頃に教えていただいた知識よ?
あれから、随分と時間がたちその後死ぬほど修行をさせられたのよ?ふふふ。


さぁ、天才に会いにきましょう?
そういうと、自然に魂だけがすっと過去とんでいるような感覚を覚えた。
そして、ポチャンっという水の微かな音が聞こえた気がした。
目の前には過去に生きている光景がひろがっている。

エピソード28

さぁ、本の世界から降り立ったわね。
あら?どうしたのかしら?
余りの高速の無重力に酔ってしまったのかしら?無理もないわ?ふふふ。

目の前には少し驚いた顔の紳士がいる。
「あぁエメール、私以外にもインスピレーションを与える男がいたのか」
そう言うと少しがっかりとした渋い顔をしている。

「あら、良いエネルギーや閃きは共有しては?彼は素晴らしい作家なの、今夜はあなたの才能で耳を幸せにしてあげて欲しいわ?」
それを聞くなり
「良いだろう、聞くが良い」

そういうなり、紳士がひと呼吸おくと激しいパイプオルガンの音が低音から高音の鍵盤まで高速で駆け昇ってゆく。

それを聞くなり、
「そうよ、良いわね、最高に音が旋律を伴い踊っているわ」
エメールがはしゃいでいる。

書生はと言うと、あまりの音の速さと大きさの迫力に飲まれ、この紳士の魔術的に奏でられる音に酔う。

どんどん勢いはまし、大音響で悲壮感から始まり、何やら神々しくもある様な高音で小さく終わりを迎えた。

「ふふふ、あなたったらいつにもなく激しいのね」
「まだまだそこの小男には負けられないからね」
そう書生に視線を一瞥させる。

「君、私の音をどう評するね?詩的な答えを聞きたいところだね」

「僕は……」
言葉が圧倒され続かない。
「この天から逃げるような……まるで雷に打たれ逃げ惑う様な最初の音が、自らの過酷な運命に必死に抗う男を連想させる。
そしてやがて才能を磨くための修行に没頭し、最後には一筋の救いを見て表現した音に聞こえた」

それを聞いて、紳士とエメールは目を合わせてクスリと微笑む。

「彼ったらどうかしら?私がミューズとして魅せる才能を花開かせる一員として認めてくださるかしら?」

「まだだね、粗削りの素質はある様だ、君はまだまだ修行が必要だね」

「ふふふ、ありがとう」
そう言うとエメールは紳士の肩に頬を寄せる。

そうして、天上の音をこの世に宿したような音楽に皆が聞き入っていると空が白み始めた。

「あら、いけない」
「また、あなたとの逢瀬が延びてしまったわね?ふふふ」

「あーーーーーー、また誤魔化された」
そう書生が憤慨していると、そっと頬にキスをされる。

そして紳士に向かい、
「今夜はとても素晴らしい夜だったわ?
また今度はアリアを歌いましょ?」

「あぁ、また会おう、我がミューズよ。
まぁ、新入りも頑張りなさい」

そう別れのあいさつを交わす。

そういうなり、朝靄のように目の前が煙に巻かれ目の前が揺らぐと、
気づいたら書生は一人ベットで座っていた。

夜の帳3

夜の帳3

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-12-16

CC BY-ND
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  1. エピソード21
  2. エピソード22
  3. エピソード23
  4. エピソード24
  5. エピソード25
  6. エピソード26
  7. エピソード27
  8. エピソード28