今日の無題

 決して、失われないと確証されているものほど、信じられないものはなかった。

 きょうもどこかで、しらない街が崩壊しているのだと知る。
 うつくしい自然が、朽ちていくばかりなのだと気づく。
 やさしいだれかが、あしたにはつめたかったりする。ひどかったり、こわかったりもする。
 いじわるなひとが、あしたはやさしかったりする。かもしれない。
 きらいが裏返って、好きになるかもしれない。(でも、好きの反対は、無関心であるというから、きらいの裏が好きであるとは限らないと、ネムは言い捨てる)

 コンビニで、ちょっと高級なフィナンシェを買って、もさもさ食べているあいだにも、世界はすこしずつ変わっていて、わたしも、ちょっとずつ変化しているのだろうかと思うと、それが、進化なのか、退化なのか、はっきりしないことを憂う。
 動画サイトを観ながら、こういう無駄な時間がもっとあっていいと、ネムは言う。にんげんは働き過ぎだしと、ネムはぼやく。
 地球は、ただじっと、宇宙のそこにあって、でも、地球のなかは日々、めまぐるしく、さまざまなものがうごきまわっていて、ふと、宇宙から見た地球という星に、わたしたちにんげんが生きて存在していることを、漠然と、ふしぎに思う夜もある。しらべるつもりはないけれど。ふしぎを、そのまま、ふしぎとしておきたいと思いながら、わたしは、スナック菓子をばりばりと食べる。

今日の無題

今日の無題

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-30

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