刹那的なピュア

 ああ、愛なんてものは、かたちのない、不確かなものとして、そこらじゅうにあって、確かな存在になったとき、はじめて、愛、と呼んでいい。
 空中分解した。ばらばらになったので、なんだか軽くなった、からだを、彼は丁寧に撫でる。まるで、じぶんのからだのように。金平糖みたいな星屑を吐く、ちいさな生きものたちが、寄り添いあって眠っている。丸まって、ぎゅっとくっついて、ぜったいに離れないという意思をもって。団子みたいと、彼は云って、無駄を削ぎ落した、ぼくの肉体を愛でる。傷ついて、傷つけて、目には見えないケガを繰り返しながら、みんな生きていて、一ミリも傷つかない方法はおそらく、ないのだろうと思うと、ちょっとした絶望すら覚える。ぼくらはあと、いくつの傷をつくり、あたえられるのか。彼に触れられたところから、ぼくは、どろりと溶けてゆく。そのまま、彼の皮膚に纏わりつき、毛穴から吸収されてもいいと思っている。融合と、依存。
 朝を迎える頃、ちいさな生きものたちの群れが、連鎖的に、ちいさなあくびをする。

ふあ
ふわあ
ふわわわわあ

 またひとつの夜を、ふたりで越えたね。
 ぼくは、彼にそう微笑んで、彼もまた静かに、穏やかな笑みを浮かべる。
 どんなにかなしいことが起こっても、つらいできごとがあっても、雲の隙間から差し伸べるように現れる朝陽は、無条件にやさしい。

刹那的なピュア

刹那的なピュア

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-11-21

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