何綺麗なフリしてんだ

何綺麗なフリしてんだ

勘違い

才能という引き出しに手をかけられなくなってどれくらいの時間が経ったんだろう。
もとよりそれは才能の引き出しだったのか否かは置いておいて、私は過去の私に光を見始めた。
きっと何も考えずに書いた散文詩達は、数年経った今、意味を含む散文詩に進化していた。

何も変わらないと思ってた。
きっと、ずっと、ずっと、変わらないんだろうなって。
私は永遠に子供なんだろうなって。柔軟なんだろうなって本気で考えてた。

でも、違ったみたい。
知識の引き出しは確かにいつでも引き出せる。
でも、それぞれの年代にしか開けられない扉があるみたい。
5歳の引き出し。9歳の引き出し、15歳の引き出し、20歳の引き出し、みたいに。
たぶん、各年の12月31日までが期限。1月1日になった瞬間見えなくなってしまうんだろうなって思う。

正直びっくりしてる。私はいろんなことをやめてきた。中途半端にしてきた。
その代償なのかもしれない。全然ストイックじゃないし、やる気も一瞬しかないし。

あぁ…あぁ…後悔先に立たず。当たり前だ。立っていたらみんな最高の人生を過ごせるんだ。
ゴールに向かって一直線ができるんだ。悩まなくて済むんだ。お酒や煙草で心を満たすことはないんだ。

私は今26歳の引き出しすら開けられなくなっていた。
人生において引き出しを開ける作業っていうのは大事なのだけど、それすら放棄してしまおうとしていた。
でも、今は違う。
死が、私を変えた。
完璧に変えた。
私はまた、普通からどんどんずれ始めた。
普通という幸せの中にいることを拒絶し、特殊という禁忌に触れようとしている。
禁忌の中でしか人は育てない。当たり前だ。普通は感覚を鈍らせるんだ。心を腐らせるんだ。時間を鈍化させるんだ。
そうはさせない。止まっていた時間の流れを高速に。綺麗だった心にラクガキを。
今一度染まるんだ。真っ黒に染まるんだ。全てを否定してやるんだ。それでいいんだ。もう普通に死ねるなんて考えるな。
私は元から汚れてるんだ。本当に醜い方のアヒルなんだ。救われるなんて思うな。真実なんて思うな。信じるな。

心に穴を開けたまま生きろ。
私は人に手を差し伸べられないんだ。

何綺麗なフリしてんだ

何綺麗なフリしてんだ

救われるなんて思ってんじゃねぇよ。

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-10-29

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