ミッドナイト
むね。静かにそっと、耳をあてて。音。鼓動。ふるえ。規則正しい、躍動。
夜明けに向かって叫んでいたのは、たいせつなだれかをきずつけた十七才。崖の上から、空と海を切り裂く、青白い稲光をみつめていた。日々の、いつも、どこかにひそんでいる、愛なんて、しらないあいだに朽ち果てていて、気づいたときには、なきがらになっていて、むなしいだけの、からっぽなだけのうつわが、そこにある。真夜中の街は、忘れかけていたなにかを呼び起こして、わたしたちに突き立てる。とがっている。ちょっと触れるだけで、チリッとした痛みと、ぷくりとあらわれる、赤い点。星のうらがわをみるために、めくり、ひっくりかえして、そして、みなければよかったと後悔するのは。ひと。
アパートの、ちいさな部屋で、せんせいの、肉の重みを感じながら、もう、このまま、おしつぶされたいと思う。
終着。
ミッドナイト