無地
ジャンルの方向性迷子状態のものを集めてみました。
自由度高めに色々書いてます。
ありふれた一日と君に
君を連れて どこまでも行けたらいいのに
あの日の空の約束ごと君を連れ去りたいなんて
ミルクを ほんの少し足したような真昼の月が浮いていた
歩いて帰るには なんだか勿体ないような
そんな ありふれた何でもない一日が あってもいいんじゃない?
視線の上では鍵尻尾のトラ猫が 僕を見下ろしていた塀の上
繰り返しの終わりを告げるような
一週間の始まりを告げるような
朝焼けを抱きしめながら
また新しい自分へと還ってゆく
鯨と夢
空から見る鯨の夢
白く舞い散る花冠をあなたへ
遠く遠く まだ遠く 今もここにいる
のんびり眠る仔猫の微睡み
キラキラ踊る木漏れ日のダンス
カサカサと枯れ葉に埋もれる昼下がり
非日常を日常に
すり抜ける心に響く風の音
空から覗いたら あの日の僕が見えたんだ
花冠をあなたへ
白く白く舞い散る花に
のんびり泳ぐ鯨の夢をみる
眠る街
魚が泳ぐ群れなして
夜明けの合間 ビルの谷間見え隠れ
ゆらゆら 尾ひれ揺らしては
振り子の時計 カチカチ歯車回る
おやすみ
おやすみ
良い夢を
静寂包む とっておきの夜と共に
花の舞
水面映るは花鏡
お機嫌麗し 今日の君
咲きこぼれし その姿の艶やかさ
はらはら 唄う 花の舞
君に唄う この心
あなただけにと舞うのです
箱庭
小さな君が そこにいて
たたずむ僕が ここにいる
まーだだよ、と君が言うから
僕は ここから動けない
箱庭世界の果ての先
今なら きっと君を連れ出せそうなのに
君の抜け殻抱きしめた僕が独りきりなのは なぜ?
まだ大丈夫
それは魔法の呪文
手放す勇気とあきらめない心
教えてくれたのは君でした
心ごと僕の全部
ありったけ君に捧げるよ
君の青
真っ青な空に
ぷかり浮かんだ雲の群れ
ああ ここにもいたんだね
空がこんなにも近い場所があったんだ
海に映った空の色
ああ こんなにも近かったんだ
海の青に空の青が混ざり合い
君の色に近づけばいい
君の青になればいい
今日の空に君重ね
ご機嫌窺いの昼下がり
銀月
忘れられた月形見(つきがたみ)
銀の光り影
届かない 届かない
ゆらゆら揺れる蝋燭の影
そっと雲が隠した月追いかけて
素足の音だけ木霊す
刹那の願いと問いかけ
絶えず揺れ続ける足元
ここは違うと言う事は禁止事項
忘れ形見 銀の月
ゆらゆら揺れこぼれ
銀月に流した涙 銀化粧
弔い
剣をかかげ 十字架を背に弔いの鐘の音響く
涙を浮かべ 友に別離の餞別に
別れの言葉は まだ早く 友に告げることすらできず
戦場駆けるは一陣の風
叫び声は戦火の中に消えていく
鉛のごとく重くのしかかる この痛み
数秒ごとの命のやりとり
明日は敵か味方か それすら知らず
生か死の狭間(はざま)で 正気は狂気に 狂気は正気に
いつ果てるとも知らず
遠くの地で 弔いの鐘の音が鳴り響く
ランプ通り
ポッ ポッ ポッ
夜になると ほおずきが橙色(だいだいいろ)の光放ち
夜空には たくさんの星々のきらめき
ポッ ポッ ポッ
今日も元気にランプ係りのおじいさん
みんなの足元が転ばぬようにと
ほおずきの中に光を灯していくんです
ポッ ポッ ポッ
誰にもできる お仕事
でも 誰にもできない お仕事
今日も ランプ係りのおじいさんは
心をこめて ほおずきに光を灯していくんです
君が道に迷った時は
ほおずきを持っていてね
きっと 君のもとにもランプ係りのおじいさんが行くから
君のほおずきに光を灯すからね
暗い夜道も これなら大丈夫
ポッ ポッ ポッ
今日も元気にランプ係りのおじいさん
みんなの為に ほおずきの中へ
優しい気持ちをこめて光を灯しているんです
太陽に憧れた蜥蜴の詩(うた)
まっすぐに向かうことしか私は知りません
まるで太陽に憧れた あの蜥蜴(とかげ)のように
もし この身体が無くなったとしても
あなたに手が届くのであれば きっと幸せなことなのでしょう
空の果て
旅路を行く果て
空の果て
砂粒に埋めた君の骨
緑あふれた頃のこの砂丘 それはもう昔のこと
砂に覆われた大地が広がるばかりのこの地で
風にのり 歌声が聞こえてきた
それは
懐かしさを呼び起こす 過去への記憶の扉
君はもういないと知りつつ
首からさげた袋に詰めこまれた君の欠片
立ち止まらず
ただ 立ち止まらず
やっと見つけた目印は 君と僕だけが知っている目印
お互い交わした約束は 思い出の場所で眠りにつくこと
たったそれだけのこと
思い出の欠片ごと 君埋(うず)め
最後に 静かに僕の涙が君を濡らした
失くしものは 今はもうないことを知り
無地