ムラサキハナナの花言葉

 しゅんくんのお母さんは、しゅんくんが生まれるずっと前から毎年、ムラサキハナナの種を庭にまいていた。しゅんくんの9月の誕生日にいつもまいていた。その花を毎年縁側で、家族そろって見るのがみんな好きだった。
 5歳の誕生日のこと、お母さんが種をまく前に、しゅんくんに声をかけた。
「しゅん、一緒にお花の種まいてみる? 」
嬉しくて、大きな声で返事をした。
小さな両手にいっぱい、種を乗せてくれた。
自分の手の中で小さな命が脈を打っているような、不思議な気分になった。
種をまく前にお母さんが、何かをまいていた。聞くと、『ハモグリバエ』という虫から、お花を守るために、まいたそうだ。
白い小さな粒をまき終わると、お母さんの真似をして、庭に種をまいた。まき終わると、お母さんが優しく、薄く土をかけた。
紫色のじゅうたんが春に、庭一面に咲き乱れることを想像しながらまいた。
種の内は、雨が降らない日以外、庭が乾いていると、しゅんくんは進んで水まきをした。
ホースで水をまくには、力が足りなくてまけなかったので、しゅんくん用の小さなじょうろで、水をあげた。初めてまいた種に、しゅんくんに責任感が芽生え、お母さんに、
「水は僕がまくよ」
と意気込んだ。外付けの水道と庭とを何回も往復し、しめった庭を見てほこらしく思った。
 それを毎日見ていた、お母さんは、ほほえましくもあり、頼もしくも感じた。
 実りの秋がそっとにづくりを始め、冬がそっと忍びよろうとしてきた。
 ここ最近雨が降ったり、止んだりしている。
 庭は、雨で湿っているので、水をまくことが少なくなった。
 それにここ最近寒い日が、多くなった。
「お母さん、最近雨多いけど、ムラサキハナナ花大丈夫かな? 」
「今の時期は、しぐれって言って、そろそろ冬のお仕度を始める時期ですよ、って教えてくれているの。あ、そうだ、今日晴れているから、間引きしなきゃ。」
「まびきってなぁに? 」
「お花がね、ギュウギュウだと、病気になったり、虫さんに傷つけられたりするの。だから、細い芽を抜いてギュウギュウから、解放させてあげるの」
「お母さんって、本当にいっぱい知っているんだね。すごいや」
 目をキラキラさせて、お母さんを見つめた。
 ムラサキハナナは、順調に育って行った。
 秋が手を振り、冬が待っていましたと、言わんばかりに、口笛を吹きながらあぐらをかいた。
「寒いな。お花は大丈夫かな」
 この頃、布団に入るとお花のことが心配で、よく寝られなかった。
 今まで、お母さん1人でお世話をしていたから、気にもとめていなかった。でも今回は、しゅんくんも、お世話をしたので、知らない間に、去年よりずっと愛着心がわいていた。  
 ある朝目が覚め、布団から出ると、いつも以上に寒かった。お花が心配になり、急いで縁側にかけていった。
 庭には、薄っすらと雪が積もっていた。雪はまだ降っていた。
 慌てて、朝ごはんの用意をしていた、お母さんの所へ行き、雪のことを話した。
「大丈夫。ムラサキハナナは、雪に強いのよ。しゅんは、寒い日、お布団から中々出てこないけど、ムラサキハナナみたいに、強くなれるかしら」
「ぼく、ムラサキハナナに負けないように、寒い日だって、元気でいる」
 しゅんくんは、力を込めて言った。
 雪や雨を降らせたり、どんより曇り空にしたりする冬が、遊び疲れて、立ち上がった。
すると春が嬉そうに、たくさんの命を引き連れながら、優しく息を吹き、やってきた。
3月のとある日、お母さんが朝早くに、起こしに来た。
「おはよう。しゅんちょっと来て」
 言うと、寝ぼけ眼のしゅんくんの手を引いて、縁側へ連れて行った。
 庭を見ると、花がちらほらと、咲いていた。
「やった。お花が、ムラサキハナナが咲いた」
 飛び上がって喜んだ。
「お母さんにとって、ムラサキハナナは、しゅんよ」
「どうして? 」
「ムラサキハナナの花言葉の意味はね、色々あるけど、優秀とかいやしって意味があるのよ」
言って、お母さんは、しゅんくんの頭を優しくなでた。
「しゅんは、私の1番のいやし。一生懸命なしゅんは、とっても優秀よ。いつもありがとう」
 しゅんくんは、心がくすぐったくなった。

ムラサキハナナの花言葉

ムラサキハナナの花言葉

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-16

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