電車

 朝、電車に乗って隣の市へ発つ。慣れなかったけど、今は強い揺れにも耐えて車内で立つことができる。成長したな、と思う。これからも何百回と繰り返すんだろう。窓の外を見る。眺める。山、家、山。緑色は眼にいいらしいから、携帯は見ずに外を見てる。遅くなったときの帰りもそうする。そうしたい。そうすると、隣に座る友人までもが携帯を閉じ、しんみりと外を眺め始めるので申し訳ない気持ちになる。また真っ暗な窓に明るい車内の様子がよく映り、人々を鏡越しで見ているような状態になる。これも気まずい。また向かいの窓を見ても、向かいに乗客がいるとその人をじっと見つめているように見られてしまう場合がある。これも気まずい。外が見たい。何を眺めればいいんだ。床に這う虫か。窓越しの人々か。向かいの人か。外の闇を見たいけど、こちらの様子が映って。外と中を区別するのはちょっと楽しいんだよ。でもそのとき「気まずい」が生じる。
こんなとき、密かに私は他人のためか自分のためかを考えるのだ。乗客らの気分を害さないように窓を見ず携帯や本を眺めるか、電車の中と電車の外の景色の判別を楽しむか、どっちか。どっちでもいいか。

 外を見たいんだけど、外を見たいんだけど。
みんなが外を見れば、私も気兼ねなく外を見られるんだがね。私の周りに人がいなければ、見られるんだけどね。なんかどうでも良くなってきた。また明日も、がたん、ごとん。帰りも、がたん、ごとん。夕方に帰れたら、外は明るいので、窓に人は映らず、向かいに人があまり居なければ朝とは違った様子を気兼ねなく楽しめる。うーん、暗い時に帰る方がドキドキワクワクするかもな。ガタンゴトンあはは明日は〜プシュー!!帰ったら英単語…ガタンゴトン!ちょっとアンタ音切ってなかったの?ごめん…ガタンゴトンがたんっ帰りの電車はすいているので座れる。これが良いんだよな。まあ、こんなとこでさよなら。サヨナラ。

電車

電車

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-01

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